
世界的に圧倒的なシェアを誇るフィアットデュカトですが、国内モデルもようやく充実してきたといえるでしょう。正規輸入されたベース車両を国内のビルダーが架装して、オリジナリティーあふれるモデルがたくさん生まれています。右ハンドル、左側エントランスなど、国内仕様ならではの使いやすさもベース車両としての魅力となります。
2025年3月現在、フィアットデュカトにはサイズの違いによってL2H2とL3H2というモデルが正規輸入されています。全長の違いで分かれていて、高さはどちらも同じ。室内高は架装前の状態で1970㎜もあるので、立って歩けるのはもちろん、限られた空間ながら国産のクルマには無い開放感を感じられます。
各ビルダーがこの広い空間をどのように使うかがポイントです。そんななか、岡モータースではちょっと違ったアプローチでフィアットデュカトのキャンピングカーを作りました。それが、大きな室内空間を最大限に生かした「グランボックスシリーズ」です。
落ち着いた内装のフィアットデュカトキャンピングカー

2024年グランボックスL2を発表しましたが、2025年発表したグランボックスL3のベース車両は全長が5995mmあるL3H2というタイプになります。L2H2と比べると585mm長くなっています。運転席から後ろのキャビンスペースは3540mmもあるのです。岡モータースでは、この大きなスペースを最大限に活かせるように、アイデアが満載でした。
車内へ入ると、落ち着きのある上質な印象を感じます。インテリアデザインのベースとなるのがインテリア全体のブラウンカラー。高い天井も家具と同じカラーで、統一感があります。シートにはブラックのレザーシート生地がセレクトされていて、インテリア全体の印象を引き締める効果を発揮しています。

左側のスライドドアエントランスから中へ入ると、目の前にセカンドシートがあり、エントランス横フロント側にカウンターが伸びています。運転席と助手席が回転するので、後方へ椅子を向けることで簡単にリビング展開ができます。セカンドシートの前にテーブルを設置できるので、みんなで食事をする時などにも重宝しそうです。
乗車定員はセカンドシートの2名を合わせて4名乗車。セカンドシートのエントランス側にはスペースがあって、リアへの移動がスムーズにできるようになっていました。
運転席上部には小物が収納できるスペースを確保。セカンドシートに面している窓の上には家庭用エアコンがありますが、こちらはオプション設定になっています。

リアはラゲッジスペース兼ベッドエリア。シンプルなレイアウトで家具が少ないのですが、壁のテクスチャーもウッド調で統一されていて、落ち着きのある空間を演出しています。ベッドマットのシート生地もセカンドシートと同じ系統の生地で合わせてありました。
就寝定員は3〜6名という変則的な表記になっています。この表記の仕方がグランボックスの最大の特徴ともいえるのです。展示車両をリアから眺めると、2段ベッドのようなレイアウトが両サイドにあるのが分かります。実はこのベッド部分がカスタマイズできるので、オプションパーツの追加によって就寝定員が変更されることがあるのです。
フィアットデュカトのスペースを活用する内装の工夫

ベース車両ではキャビンの長さが3540mmもあるグランボックス。セカンドシートでのリビングエリアを確保して、リアにベッドをレイアウトしたとしても、室内の長さに余裕があるようです。最後部の天井部分を見ると、ラウンドしたU字のカーテンレールが設置されているのが分かります。そのレール内側にはダウンライトもありました。
カーテンレールが囲っているのは、ちょうどL2H2との長さの差である約60cmのスペース。そこへカーテンが装着されていて、カーテンを引くことでプライベートスペースとして利用できるようになっています。レールは天井に直接取り付けられているのではなく、少し天井から下がった位置にレール用の家具を設置して取り付けられていました。

リア全体を改めて見てみると。右側ベッドエリアの後方に壁が立ち上がっていて、その上部に前出のカーテンレールが設置されています。壁のリア側には鏡が取り付けられていて、その横にタオルなどを収納できる棚があります。天井の高さがあるので各棚の高さにも余裕がありました。
逆サイドのベッドは取り外すことができて、全体をラゲッジスペースとして利用することもできます。そのスペースは広く、大型バイクを載せることも可能。グランボックスをトランスポーターとして利用できます。キャンピングカーを拠点にして、バイクでツーリングするなど、行動範囲を広げることもできるでしょう。

展示車両はリアのカーテンスペースでの、トイレ利用を想定していたようです。スペースにピッタリと収まる水を使わないトイレラップポンがセットされていました。カーテンを閉じると、ちょうどトイレに座った状態でのスペースを確保することができるようになっていました。
トイレを載せていなければ、ラゲッジスペースとして利用できます。植木などの縦に大きな荷物も余裕で積み込めます。また、カーテンを閉じることで、着替えなどをする更衣室として利用するのもいいでしょう。使い方はオーナーのアレンジ次第です。

展示車両ではリア全体にベッドが設置されていますが、標準装備では下段に3名が就寝できるマットレスのみとなります。標準装備のマットレスの一部を上部へ設置すれば2段ベッドとしても利用できて、ハシゴも標準装備されているそうです。
展示車のリアに展開されていたベッドマットは上部のマットレスがオプション設定されたもので、フレキシブルマットというパーツで構成されています。壁に取り付けられた金具を使って、高さも調整も自由にできます。この壁の金具は両サイドに取り付けてあるので、マットを逆サイドに設置することも可能です。

フロント側にもスペースを効率的に利用できる工夫がありました。エントランス横に伸びていたカウンターからシンクが飛び出すギミックが隠されていたのです。シンクを引き出した上部にはコンロをセットできるようになっていて、その横のカウンターがテーブルとつながり、大きなカウンタートップが現れます。
フィアットデュカトをベースにしたキャンピングカーではセカンドシートと運転席側のシートを使ってリビングエリアを展開するモデルが多数あります。しかし、そのリビングエリアにシンクなどのキッチンがあるモデルは少なく、エントランス側にフロントにキッチンをまとめたグランボックスは珍しい存在といえるかもしれません。これは、リアスペース全体をアレンジして利用するために、キャンパー設備をフロント側に集中させた結果といえるかもしれません。

電源システムにポータブルバッテリーを使えるようになっているのも特徴の1つです。展示車両ではベッド下に大容量のポータブルバッテリーが置かれていて、コードが壁のコンセントに接続されていました。この電源を使って車内の電気をまかなっているのです。写真に写っているポータブルバッテリーはオプション設定されているものですが、最近はポータブルバッテリーを持っている人も多いので、すでに所有しているバッテリーも使えるようになっているそうです。
リアに設置されたフレキシブルマットは岡モータースのオリジナルで、壁側だけの支持で人が寝られるだけの対荷重をクリアしているのが特徴です。簡単に取り外したり、高さを調整することも可能で、ヒンジを接続したまま、マット部分を折りたたむこともできるのです。このフレキシビリティによって、多人数に対応したり、大きな荷物を載せるためのスペースを確保できるようになりました。
グランボックスほどの積載量がありながら、高級感漂う上質な室内を作り出したのは、その機能性のクルマとしては唯一無二の存在といっていいでしょう。岡モータース独自の開発によって生まれたグランボックスは、キャンピングカーライフの新しいスタイルを作り出すのかもしれません。