
時代の先をいく革新的なキャンピングカーを作り続けてきたアネックス。その歴史は古く、2024年に60周年を迎えています。現在のキャブコンの基本的なレイアウトといえる、リア2段ベッドを最初に提案した老舗のキャンピングカービルダーでもあるのです。
そんなアネックスの作るキャブコンがリバティシリーズ。サイズの違いでリバティ50とリバティ52があって、52シリーズには52DBと52SPがあります。DBはリア2段ベッドでファミリーに最適、SPはリアダブルベッドでくつろぎの2人旅に最適なレイアウトです。
2025年2月に開催されたジャパンキャンピングカーショーの会場にはニューモデルのリバティ52SPiが展示されていました。その革新的なモデルの進化をチェックしてみましょう。
リバティのリビングエリアを広げて52SPから52SPiへ

アネックスのキャブコンモデルリバティには、これまでリバディ52SP、52DB、50DB、52DBiがありました。どのモデルもアネックスが培ってきた技術と経験を活かして、快適かつ上質な空間を提供する魅力的なモデルでした。さらなる快適性を求めて、リバティは進化を続けていて、その最新モデルが今回紹介するリバティ52SPiになります。
リバティの基本的な装備は
- 家庭用エアコン
- 電子レンジ
- リチウムイオンバッテリー
- ソーラーパネル
- 温水シャワー
- 床暖房システム
が有名です。特に床暖房システムは、キャンピングカーに珍しい装備。これは温水システムを使って、床を温めてくれるものです。キャンピングカーは壁、天井、そして、床から熱気や冷気が伝わってくるので、断熱が重要視されています。特に冬場であれば床からの冷え込みを感じることがあります。そんな時、この床暖房システムがあれば安心。足元からぬくぬくと温まりながら快適に過ごせるのです。
リバティ52SPiはリバティ52SPがベースになりますが、レイアウトに変更が加えられ、新しいモデルへと進化していました。大きく変わったのは、リビングエリアが広くなったことです。キャビンに対して、極力室内を広く確保する技術に定評のあったアネックスですが、今回はレイアウト自体を一部変更して、リビングエリアを広げることに成功しました。

リビングエリアを広げたことで、若干、リアセミダブルベッドが狭くなりましたが、ベッドマットの形を工夫することで、頭側の広さにゆとりを作り、狭さを感じることはありません。
リアダブルベッドのレイアウトはSPシリーズの特徴で、ゆったりとくつろぎながらの2人旅にぴったり。この52SPiも空間に余裕があり、ストレスフリーな環境が整っています。
リアベッドエリアのライティングも凝っていて、リビングエリア同様に間接照明とバータイプのダウンライトが設置され、美しい光に満ちています。このような細かいこだわりが、アネックスのキャブコンの上質さを強く感じる理由なのです。

バンクベッドも広々としています。以前は跳ね上げ式だったのですが、52SPiでは引き出し式になっていました。しかも、引き出し幅を大きく取ることで、52DBのバンクスペースよりも広い空間を確保することができたのです。就寝スペースも縦向きで確保できるようになり、スペースに余裕が生まれています。
バンク部分のフロアを大きくすると、引き出し作業などが大変になるのでは?と思いますが、そこはアネックスらしい工夫が。上の写真でバンクの両サイドに取り付けられた窓の下側にレールがあるのが分かります。その形状が直線ではないのです。この特徴的な形状のおかげで、バンクのフロアがスイングするように動き、動かないマット部分を避けるようにして移動するので、スムーズに出し入れができるようになっているのです。
機能性はそのままで車内の快適性を向上

エントランスからリアを眺めるとダブルベッドの手前にマルチルームがあるのが分かります。キャブコンでリアダブルベッドレイアウトの場合、マルチルームレスが多いのですが、このリバティ52SPiではマルチルームを設置しています。リアのベッドエリアに少し入り込んでいますが、上の写真でもあったように、頭側のスペースを確保しているので、それほど気になりません。
さらに、マルチルームの角がラウンドした優しい形状で、インテリアの中でそれほど主張していないのも、室内全体の広さを感じさせる理由かもしれません。また、フロント側からのリアに繋がるように照明が設置されていて、室内で暗いエリアを作っていない、というのも空間美を作り出すのに一役買っていると考えられます。

マルチルームの内部にはホテルライクな洗面台が設置されていました。入り口側に向かってラウンドした壁があり、特別な空間を作り出しています。鏡の前に立つと、キャンピングカーの中にいることを忘れてしまうほどです。
マルチルームには外側からアクセスできる大きな扉が取り付けられていて、荷物の出し入れがしやすいようになっています。濡れたものなどを、外側から直接積み込めるのは便利です。また、断熱効果の高い、アクリル2重窓が上部に取り付けられていて、マルチルーム内を広く見せています。ここに窓があれば、明かり取りとしても利用できるし、換気窓としても利用できます。

リアのセミダブルベッドは跳ね上げておくことも可能です。大きな荷物を積むことができて、ラゲッジスペースの荷物出し入れの時にも重宝することでしょう。ベッド下にはリアラゲッジスペースへつながっている扉がありますが、上の写真のように開けておくことで、さらに大きな荷物を積み込めるスペースが生まれます。
リアのベッドマットを跳ね上げて気づくのですが、マットの下がウッドスプリング仕様になっていました。ウッドのしなやかさを利用して、ソフトなクッション性能を生み出し、マットとの組み合わせで心地よい寝心地を提供してくれます。
リチウムイオンバッテリーなど電装系グレードを3つ設定

キャンピングカーの快適性は充実した電源が必須となってきました。標準装備されている電子レンジや家庭用エアコンを気兼ねなく使うには、余裕ある電源システムが欲しくなります。そこで、アネックスではリバティに3つの電装系グレードを用意して、それぞれ、エクストラパワー2400、ウルトラパワー4800、マックスパワー9600と設定されました。
今回紹介しているモデルはウルトラパワー4800というグレードで、容量4800Whのリチウムイオンバッテリーと出力3000Wのインバーターがセットされています。この強化された電源に合わせて、走行充電システムは600W、外部充電は960Wの入力を可能にしました。

その他のグレードは
エクストラパワー2400
- 容量2400Whリチウムイオンバッテリー
- 出力2000Wインバーター
- 走行充電システム480W
- 外部AC充電240W
マックスパワー9600
- 容量9600Whリチウムイオンバッテリー
- 出力3000Wインバーター
- 走行充電システム600W
- 外部AC充電960W
というスペックになっています。
展示車両のウルトラパワー4800の電源システムはリアのラゲッジルームに設置されていました。普段はカバーされていて内部が見えないようになっていますが、きれいにパーツが配置されているのが分かります。システムはヴィクトロンエナジーシステム。エクストラパワー2400にはレノジーが使われていて、マックスパワー9600には、同じくヴィクトロンエナジーが採用されています。

キャンピングカー全体のシステムをチェックできるのが、この集中コントロールパネル。エントランス上に設置されていて、キャンピングカーの状態を確認することができます。上の写真の左下に見えるディスプレイはアネックスオリジナルのコントロールパネルで、車内照明のオンオフなどを操作できるようになっています。その上にあるのが電装システムの管理用ディスプレイ。ヴィクトロンエナジーのシステムを組み込んだときはこちらのモニターが設置されます。
さまざまな装備が最初から取り付けられていて、快適なキャンピングカーライフをすぐにスタートできるリバティですが、今回の52SPiは空間的な工夫を凝らして、さらに快適な空間を作り出すことに成功しました。高いポテンシャルに加えて、空間をうまく活用した革新的設計は、アネックスのリバティらしい進化の過程を目の当たりにしたといっていいかもしれません。