キャンピングカーの世界にも憧れのモデルが存在します。なかにはキャンピングカーを知らない人でも、知っている有名なモデルも。その1つがエアーストリームではないでしょうか。
シルバーのボディーに覆われたアメリカンスタイル。アメリカンカルチャーが好きな人にとっても、そのスタイリングに憧れ、いつかは手にしたいと思っていた人も多いはず。
エアーストリームは1930年代にアメリカで誕生しました。30年代中期には現行モデルのデザインのベースが完成していたといいます。
その後、独自の進化を遂げ、時代が移りかわろうとクラシカルな基本デザインを変えることはありませんでした。そこには独自の文化が出来上がっていて、キャンピングカーの枠を超えた特別な存在となっているのです。
この世界的に人気のモデルを国内で販売しているのが、エアーストリームジャパン。長年、エアストリームを国内に広めてきたメーカーです。
キャンピングカーの展示会で見た人も多いと思いますが、展示ブースには独特の雰囲気が漂っていて、アメリカンな雰囲気を感じることができるのです。そんな特別な存在感を、お台場キャンピングカーショーでも放っていました。
最後のモデルエアストリームBambi19CB
お台場キャンピングカーショーのエアストリームジャパンブースで展示されていたなかで、注目したのがこのBambi19CBです。ボディサイズは5820×2490×2900mm。エアストリームのモデルのなかではコンパクトなタイプになります。日本の道路事情にも適したサイズといえます。
このちょうどいいサイズのBambi19CBですが、アメリカの本土ではイレギュラーなサイズともいえます。もっと大きなモデルが一般的なのです。そんな影響もあってか、このモデルは生産終了が決定していて、新車で購入できるのは最後のチャンスとなっていました。
エアストリームとしてはコンパクトなボディですが、室内へ入ってみると広さを感じます。全幅が広めに確保されていること、レイアウトに無駄がないことなどが理由かもしれません。そして、なんといっても、特徴的なボディのシルバーカラーは室内まで同じテクスチャーで構成されていて、外からの光を反射して、室内全体に明るさを感じさせてくれます。
レイアウトはエントランスを入って、右側にリビングスペース。ここはベッドとして利用することもできます。エントランス正面にキッチンがあって、冷蔵庫を挟んで左奥にベッドルーム、そして、逆サイドにはバスルームがあります。バスルームを使用していない時は、扉が内側に収納されるようになっていて、室内のスペースを生んでいます。
廊下はほとんどありませんが、エントランスからリアベッドへ向かう通路が、廊下といえるかもしれません。上写真の左側がベッド、右側がバスルームになっています。右側のトイレなどを使用しているときは、もう少し扉が手前に膨らんで、通路側に飛び出すようになっています。
左側手前にあるのが冷蔵庫。レイアウトのちょうど中心に位置していて、キッチンエリアはもちろん、リビング、ベッドルーム、そして、エントランスの外からもアプローチしやすい位置にあります。コンパクトなモデルだからこそ、動線をしっかりと考慮してレイアウト設計がされているのが分かります。
ベッドルームはリア側の角にレイアウトされています。窓が2面にあり、外の光が入ってきて、室内はとても明るい雰囲気になります。このベッドルームでも天井部分はラウンドしたシルバーのアルミボディが見えているので、光を反射して、さらに室内を明るくしてくれるのです。
ベッドルームはカーテンで仕切ることができるので、プライベートスペースを確保するのも簡単です。エントランス脇のリビングエリアで話をしていても、しっかりとベッドルームとして機能するのがポイントです。それは家族であっても、プライベートを分割することは大切で、ストレスを軽減するためのレイアウト設計ともいえるでしょう。
エアストリームらしさを感じるインテリアの装飾
エアストリームはいろいろなサイズがあります。大きなタイプで全長7.6mを超えるトレードウインドというモデルから、フライングクラウド、カラベル、ベースキャンプなどのモデルがあります。今回紹介しているのは、昔ながらのオリジナルスタイルを継承したモデルの中では、コンパクトなシリーズのバンビ。バンビの中でもいろいろなサイズが存在していますが、この19CBはトイレを設置したモデルとしてはもっともコンパクトなモデルになります。
エントランス正面にキッチン。シルバーのラウンドしたウォールが奥にあり、美しく光っています。シンクの上には窓があり、ブラインドが取り付けられていました。一見、室内全体がアルミでできているような印象ですが、キッチンキャビネットやサイドウォールなどは、木材を使った仕上げで、アメリカン家具のようなクラフトマンシップを感じさてくれます。
シンクはコンパクトで、その横にはガラスのカバーが取り付けられたコンロを配置。カバーを閉めておけば、カウンタートップの作業スペースとしても利用できるので、キッチンの狭さを感じることはありません。右奥の壁に取り付けられたディスプレイはタンクの状態を確認するもので、キッチンで水を使っている時にも見やすい位置です。
このモデルには、キッチンとは別に洗面スペースがあります。キッチンの隣にあるのですが、クローゼットを挟んで配置されていて、完全に独立したスペースとして確保されています。鏡も大きくパウダールームとして使うのもいいでしょう。シンク回りも家庭用の設備のような重厚なパーツで構成されていました。
洗面スペース右側の壁には、ボイラーなどのスイッチ類がまとめられていて、一カ所で操作ができるようになっているのは便利です。エントランス側からも見えにくい位置にあって、インテリアのデザインを邪魔することはありません。
バスルームは洗面所とベッドルームの横に設置されています。手前にトイレがあり、奥にシャワーブースがあります。ここにも窓が付いているので、室内は明るく、換気もしやすくなっています。シャワールームは広々としていて、シャワーを利用していても窮屈さを感じることはないでしょう。
シャワー設備のヘッドやレバーなどもアメリカンな雰囲気があって、アメリカ好きにとっては、シャワールームだけでも、テンションが上がってしまうかもしれません。シャワールームもベッドルームと同じように、ボディの最後部に配置されていて、ラウンドした壁が見えます。もちろん、防水されていて白い壁にはなっていますが、ラウンドした形状がソフトな印象を与えてくれます。
キャンピングカーとしての最新設備が充実
レトロテイストのあるエアストリームですが、デザインを継承しているだけであって、中身のキャンパー設備は最新の装備になっています。キッチンのコンロ下にあるのは、オーブン機能も装備したオーブンレンジ。料理のプログラムをセットすることができて、ワンタッチで調理できるそうです。
キャンピングカーの世界では電子レンジが一般的になってきましたが、オーブンまで装備しているのは、さすがアメリカンスタイル。ケーキなどを焼いて、ホームパーティーをするなど、すべてがエアーストリームの中で完結するのは、ちょっとしたぜいたくさを感じます。
キッチンの足元にあったのはガス警報器です。コンロにはガスを使っているので、火を使う時も安心。ガス警報器など、安全面でもしっかりと対策されているのは、キャンピングカー先進国ならでは。その他にもボイラー設備など、キャンピングカーで快適に暮らすための装備がしっかりと整っていました。
天井にはスピーカーまで取り付けられています。アメリカンな雰囲気の中でお気に入りの音楽を聴けば、キャンピングトレーラーでの生活もきっと楽しく充実したものになるのではないでしょうか。
フロント側にはボディ同様、美しいシルエットのボンベ用ボックスが取り付けられています。そして、ヒッチ部分のジャッキが電動式になっていて、操作も楽に行えるようです。アメリカンスタイルのトレーラーの場合、ヒッチ部分にも荷重がかかることがあるので、電動式になっているのはありがたいのでは。
コンパクトなバンビはクラシカルなデザインで、愛嬌のあるシルエットが、多くの愛好家によって親しまれきました。特にこの19CBというサイズは、国内での使用にちょうどいい大きさで、最高の空間を提供してくれるモデルです。生産終了にともない、新車としては最後の一台となってしまいましたが、エアストリームを夢見ていた人にとっては大切な存在となることは間違いありません。