最近のキャンピングカーの進化をみていると、このまま生活環境を向上し続けることで、一般的な住宅になってしまうのでは? と思ってしまいます。北米の大型キャンピングトレーラーなどは、もはや立派な住宅としても利用できるほどです。
キャンピングカーの先にあると思われる住宅では、タイニーハウスやスケルトンハウスなど、無駄を削ぎ落とした建築物が話題となり、新しいライフスタイルを求めて、コンパクトな住宅を望む人も増えています。
快適性を求めるキャンピングカー、シンプルな生活を求める住宅、その2つは違う方向を向いている様にも感じます。やはり、キャンピングカーと住宅は似ているようで、対峙する存在だったのかもしれません。
しかし、今回住宅建材メーカーのLIXILとキャンピングカービルダーのケイワークスがタッグを組んで、新しい空間を作り出した、というニュースが。それは、キャンピングカーのようで、住宅のようでもある、不思議なキャンピングトレーラーでした。
目次
建築のアプローチで生まれたキャンピングトレーラー「MIO SPACE」
2024年9月に開催された名古屋キャンピングカーフェアで初お披露目されたのが、ケイワークスのキャンピングトレーラーMIO SPACEです。
これまでにも国産キャンピングトレーラーを販売してきたケイワークスですが、既存モデルとは一線を画すデザインで、来場者の注目を集めていました。
ボクシーなスタイリングながら、ラウンドしたエッジ、そして、スムージングしたようなフラットボディ、どれをとっても、今まで見たことのないデザインです。エントランスのない側からみると、それが一体何なのか分かりません。
よくみるとタイヤがボディの中央にあります。上半分をボディと同じプレートで塞ぎ、その存在感を消しています。ボディの下半分は住宅でいうところの腰壁のようなデザイン。木目のプリントが施されていて、その間にスジが彫られている形状です。
ネイビーカラーのボディに明るい木目調のカラーリングが、このキャンピングトレーラーのキャラクターを表しているようにも感じます。タイヤのホイールにはキャルホイールカバーが取り付けられていて、どこかアメリカンな雰囲気も出ていました。
ボディには突起が少なく、スムーズな面で構成されています。あまりにもすっきりしているので、最初気づくことができませんでしたが、エアコンの室外機がきれいに収まっていたのです。その先には、キャンピングトレーラーであることを証明するように、カプラー設備が設置されています。
ボディ下には停車時にキャビンを安定させるスタビライザージャッキも見えます。しっかりとキャンピングトレーラーとしての機能性を備えていました。
フロント側をみると、かろうじてキャンピングトレーラーとしての特徴を捉えることができますが、既存モデルとはデザインが大きく異なり、LIXILとのコラボレーションモデルであることを感じさせてくれます。
住宅とつながる存在感とキャンピングカー製造技術の融合
リアから室内をのぞくと、その全貌が見えてきます。このMIO SPACEはインテリアをオーダーメイドのように製作することも可能。今回、展示されている車両は基本レイアウトと標準的な装備であり、自由にレイアウトを変更することもできるそうです。
今回のモデルはLIXILのデザインワークをケイワークスの製造技術で形にしているそうです。その特徴の1つでもあるのが、このリアが大きく開くスタイル。室内いっぱいに広がった空間を無駄なく使っているのが分かります。
LIXILの取扱商品にガーデンルームという、住宅に部屋を追加する設備があります。そのイメージを踏襲しているようで、大きな天窓と窓は必須条件だったといいます。
壁に採用されている木材のプレートは、ガーデン建材のバーゴラをイメージして製作されたバーゴラ家具。アウトドアのようでもあり、モダンインテリアのテイストもある、そんな特徴的なデザインが印象的です。
こだわったポイントが、このデッキのようなスペース。リアゲートの下部を使って、室内フロアを外側に延長しているのです。
このスペースを展開することによって、完全にキャンピングトレーラーとしての存在感が消えてしまい、小さな住宅であるような錯覚を感じます。
それもそのはず、この部分は住宅の縁側をイメージして作られたパーツで、さすがLIXILのデザインであることを印象付けるパートでもあります。
自宅の庭に設置して、室内からアプローチする時も、このデッキ部分を玄関とすれば、またく違った存在感を醸し出してくれるに違いありません。
大きな窓から光を取り入れた特別なキャンピングトレーラー
天井には大きなルーフウインドウが取り付けられていました。キャンピングトレーラーではベンチレーション程度の天窓が空いていることが多いのですが、このサイズはあまり見かけません。室内から眺める夜空もきれいに見えることでしょう。
その両サイドにはバータイプのダウンライトが取り付けられて、室内全体を照らしています。こちらも、キャンピングカーの設備ではあまり見かけない照明です。
室内の奥、フロント側の上部に格子のキャビネットがあり、その中にエアコンが隠されています。なるべく表にモノを出さない、というデザインコンセプトで、エアコンもしっかりと隠されているのです。
配線などはフロント側の壁の中に収納されていて、外から見えたエアコン室外機はフロント側の下部に収まっています。シンク機能がついた収納スペースもあり、キャンピングカーとしての利用も可能です。
このようにモノを表に出さないことで、非日常を味わうことができるデザイン。エクステリアデザインのスムージング風シルエットも、そんなコンセプトを形にした結果なのでしょう。
リアゲートの下部はデッキとして利用されますが、上部はこのようなウインドウになっています。大きなウインドウは、ゲートを閉じた時も、室内に開放感をもたらしてくれるのです。そのためにこのサイズのウインドウが取り付けられることになったのだそうです。
ダンパーで跳ね上げられて、常に開放できるのもポイント。大きな開口部をキープすることで、外と室内をボーダレスに繋げることができます。
上に出てきた縁側としてのデッキに対して、こちらは「ひさし」をイメージしていて、縁側とひさしのある住宅のシーンを切り取ったような空間が展開されます。
キャンピングカーと住宅の両方からアプローチしたキャンピングトレーラー
MIO SPACEが完成するまで、長い時間がかかったといいます。LIXILにとっても、今回の試みは新規事業としてスタートしたようで、双方が新しい試みに挑んだ結果でした。
ケイワークスのキャンピングカー製造技術が発揮されているのですが、この形になるまで苦労したともいいます。
まず、LIXIL側の製品としての基準が、キャンピングカーで経験したことのない高さだったといいます。その基準をクリアするために苦労が絶えなかったとも。
ケイワークスにとっては、経験したことのない仕事でしたが、今後、自社のブランドを製造する際に役立つ経験であったことは間違いありません。
MIO SPACEのコンセプトは「365日活用できる自由な暮らしを提供する」という内容でした。建材メーカーならではのデザインを活かして、新しいライフスタイルを再定義しようとしているのです。
住宅の一部として利用することも考えてデザインされていて、住宅との調和性も持たせているといいます。だからこそ、キャンピングトレーラーとしては、これまでにみたことないエクステリアデザインが生まれたのかもしれません。
そして、なんといってもクルマで牽引して移動する、可動性というポイントも重視され、安全性と走行性を高めたキャンピングトレーラーが完成しました。その可動性を高めたのがケイワークスの存在だったのです。
住宅の庭などで使って、外にも持ち出すことができる。普段は自宅の1部屋として使って、旅行の時にはいつもの空間と一緒に移動する。そんな自由な使い方ができるキャンピングトレーラーと住宅の中間にあるようなMIO SPACEだからこそ、365日活用できるといえるでしょう。
まったく新しいアプローチで、生まれたキャンピングトレーラーは、LIXIL側の住宅の一部としてのオーダーにも対応するようで、キャンピングカーマーケットを超えた展開が期待できそうです。
MIO SPACE 諸元
- シャーシ
- ALKO
- 就寝定員
- 2名
- 価格
- ¥9,760,000(税込)〜