タコス新車「NVジャック」
日産NV200は、ハイエースクラスのバンコンと軽キャンピングカーの間を埋めるキャンピングベース車の一つとして人気が高い。 このクルマの魅力は前に張り出したボンネットを持っていることで、前突のときに、ドライバーにかかるリスク回避が容易であるだけでなく、運転ポジションが乗用車ライクであるということが挙げられる。
2009年に市場に登場したシャシーであるため、すでに8年が経過し、これをベースにしたキャンパーとなると、ノーマルルーフのもの、ポップアップ仕様、ボディカットしたキャブコン系などさまざまなスタイルのキャンピングカーがトライされ、これにバンベース、ワゴンベースという分類も絡み、ユーザーにとっては非常に選択肢の多い車種となっている。
基本的には、車中泊を想定して内装をシンプルに仕上げたものと、本格的な8ナンバー仕様のモデルに分かれるが、そのどちらを選ぶかは、それこそユーザーの使用目的や家族構成によって決まる。
ハイルーフで居住性向上
このほど「株式会社タコス」から発売された「NV jack(NVジャック)」は、ノーマルルーフの上に、タコスのオリジナルハイルーフを架装するというコンセプトで企画されたキャンパーで、その狙いはノーマル車の取り扱いの良さを確保したまま、天井高を稼いで居住性を向上させようとしたところにある。
NV200ベースのキャンパーで、ノーマル仕様に近いものは、基本的に夫婦2人で使うことを前提としたものが多い。しかし、このクルマの場合は、ファミリーユースも射程に入れており、夫婦の2人旅の場合は、豊かになった居住空間が荷物の収容スペースも増やしていると考えてよい。
このような居住空間を増やす手法としては、他にポップアップルーフという構造もある。ポップアップルーフの場合は、ルーフ部分を格納してしまえば、全高がノーマルルーフとほとんど変わらない場合が多く、高さ制限のある駐車場では有利である。
しかし、ポップアップした状態で休むときに、一般的に防寒という面でハイルーフほどの耐候性に乏しく、また風雨の強いときは使えないケースもある。
その点、ハイルーフは高さ制限のある駐車場で使いづらい場合も出てくるが、耐候性においてはポップアップルーフよりも優れており、移動中もリヤ席に座る人たちのヘッドクリアランスが保証されるので、心理的にも開放感が生まれる。
「NVジャック」では、このように天井高が確保されたため、そこに2段ベッドを設定することが可能になった。
天井側のベッドは、構造要件上の「就寝定員」としてはカウントされていないため、いちおう「子供2人用ベッド」ということになる。しかし、ベッド長が1,800mm以上取られているので、大人2人でも寝られないことはない。
下のフロアベッドは1,850mm×1,350mm。
こちらは大人2人が余裕で寝られるスペースが確保されている。
効率的な格納式シンク
このクルマの優れた機構の一つに、「格納式シンク」がある。これは、ボディの内側の右サイドに設定された可動式のギャレーのことで、ベッド展開するときは、それがワンタッチ操作で壁側に折りたたまれ、ベッドメイクの邪魔にならないようになっている。
この装備はタコスの大ヒット商品である「ハナ」に装着して好評だったもので、今回はそれの流用である。近年、スペース効率を優先するはずの小型のバンコンや軽キャンピングカーにおいても、一部シンクが復活する傾向が出ている。
道の駅などで車中泊した朝など、いちいちトイレの洗面台に行かずに、車内で洗顔したり、歯を磨きたいというニーズは女性を中心にして生まれている。このクルマの「格納式シンク」は、それに応えるものといっていい。
内装は男性好みの“艶消し感覚”の黒。精悍な外形フォルムとマッチして、かなり男っぽい美学を感じさせるクルマに仕上がっている。
なお、オプションとなるが、運転席と助手性には、後ろ側に回転するシートを選ぶこともできる。そうなると、フロントシートとセカンドシートを向かい合わせる対面対座ダイネットも可能になる。
NV ジャック 諸元
エンジン種類 直4DOHC ガソリン
最高出力 80kW(109ps)/6000rpm
最大トルク 152N・m(15.5kgf・m)4400rpm
ミッション 4AT(5MT)
駆動方式 2WD FF
全長 4430mm/全幅 1700mm/全高 2330mm
乗車定員5名/就寝定員大人2名+子供2名