
国内最大のキャンピングカーイベントジャパンキャンピングカーショーが開催されると、会場の駐車場にはたくさんのキャンピングカーが集まってきます。遠方から訪れるオーナーも多いようです。しかし、会場に隣接する駐車場では宿泊ができないため、車中泊しようと思っている人は、キャンピングカーで宿泊できる場所を探さなければいけません。
よって、会場の幕張メッセから離れた場所に宿泊地を確保しなければならなかったり、非公認の場所に宿泊せざるをえない人もいるようです。これまでにも、ショーに合わせて、車中泊イベントが開催されたこともありましたが、それほど広く認知されていなかったり、キャパシティの問題があったのも事実です。
こんな状況が続いていましたが、2025年2月開催のジャパンキャンピングカーショー2025に合わせるように、実証実験をともなった車中泊イベント「稲泊いなはくサンセット2025」が開催されました。場所はショーの会場である幕張メッセから約4kmの稲毛海浜公園駐車場でした。
目次
新しいスタイルでキャンピングカーショーを楽しむ「稲泊いなはくサンセット」がスタート

ジャパンキャンピングカーショー2025の日程は1月31日から2月3日まででした。今回の車中泊イベント稲泊いなはくサンセット2025が開催されたのは1月30日から2月3日までとなっています。ジャパンキャンピングカーショー開催前夜から宿泊できるようになっていました。
会場となったのは稲毛海浜公園の第二駐車場です。全面が貸切状態になっていて、約160台のキャンピングカーが停められるように準備されていました。宿泊料金はキャンピングカーの全長5.4mまでのサイズで1泊2500円、全長5.5〜7mのサイズで1泊3500円。普通乗用車で利用することも可能です。

駐車場はナンバー読み取り式になっていて、事前に登録しておけば、クルマの出し入れもスムーズに行えます。チェックインは13時〜21時、チェックアウトは10時、夜間は22時以降に就寝時間が設定されていて、22時〜6時はクルマが出せないようになっていました。
宿泊地は自然あふれる稲毛海浜公園の駐車場です。各サイトのサイズも大きく、チェアなどを出してくつろぐことも可能。もちろんサイドオーニングを出すスペースも確保されていました。ガス・電気であれば屋外でのコンロも利用可能だったので、BBQを楽しむ事もできたのです。

開催期間中はあいにくの雨でした。クルマの外に出て、公園の自然を楽しむオーナーの姿は見られませんでしたが、木に囲まれた駐車場は落ち着きのある雰囲気でした。道路からも離れていて、夜は交通量も少ないことから、静かに過ごすことができたようです。

今回は参加台数も少なく、スペースにはかなり余裕がありました。もう少し、このイベントが周知されれば、利用する人はきっと増えると思います。
既存施設を有効活用しRVリゾートの普及を目指した実証実験

いなはくサンセット2025は実証実験としてのイベントでもありました。主催者の思いは「RVリゾートの普及」です。その目的を達成するために、どのような設備、サービスが必要であるかを確認するための車中泊イベントだったのです。
公園などの既存設備を最大限に活用することも目的とされています。今回は炊事場などの水場が用意されませんでしたが、トイレは公園設備をそのまま利用。マナー啓発にも努め、みんなが気持ちよく利用できる環境を作り出していました。

駐車場でのイベントでしたが、稲毛海浜公園内を利用することも可能です。公園は稲毛海岸に沿うように横に長い公園。大きな芝生の広場があったり、ワンちゃんの散歩コースにはうってつけの環境も整っています。上の写真の奥には長い海岸線が続いていて、ちょっとしたリゾート気分を味わえる光景が広がっています。

夕方になればサンセットを楽しむことも。広々とした海岸線と夕陽に染まる空、稲毛海岸でのサンセットは関東でも屈指の美しさを誇ります。キャンピングカーでのんびり過ごして、夕陽を見に、ちょっとお散歩というぜいたくな時間を過ごすこともできるのです。

事前に予約しておけば、公園内でBBQなどを利用することもできるそうです。ビーチでのサンセット焚き火、グランピング、クーラーの効いたテントの利用など、さまざまなメニューが用意されています。上の写真の森の中でモーニングを楽しむこともできるそうです。
ここまで整っていれば、キャンピングカーでの車中泊というより、リゾートを楽しむことを目的にしてもいいようです。稲毛海浜公園にはこのようなサービスが元からあったのですが、キャンピングカーオーナーにとっては馴染みが薄い存在でした。このように既存の施設やサービスとキャンピングカーとマッチングさせ、RVリゾートとしての第一歩を歩み出そうとしているのです。
全国から集まるキャンピングカーユーザーに思い出を提供

稲毛海浜公園の中に稲毛記念館という建物があります。1階は資料室として、稲毛海岸の歴史を知る展示もありました。予約すれば、イベント開催中に、この記念館も利用できるそうです。ジャパンキャンピングカーショーでは全国からキャンピングカーオーナーが集まってきます。久しぶりに会う友人との交流の場所としても活用できるのではないでしょうか。

今回のいなはくサンセット2025ではクラブでの参加があり、この宴会場を貸し切って、パーティーが行われたそうです。キャンピングカーのイベントといえば屋外が一般的ですが、このような大きな屋内施設があれば、ちょっとした大宴会を開催することも余裕なのではないでしょうか。
自然あふれる公園の中に、このような立派な施設があるのも驚きです。稲毛海浜公園の存在を知っている人も多いと思いますが、その設備に関しては、今回のようなイベントがなければ、知ることはなかった人もいるはずです。まさに、そんなストーリーこそ主催者の意図したことだったのかもしれません。

いなはくサンセット2025の運営をしていた村田さんは、
「毎年、キャンピングカーショーに来ていたのですが、どこか泊まれる場所がないかと、いつも感じていました。そんな時、友人の紹介で稲毛海浜公園を運営しているワールドパークと繋がりることができたのです。先方も既存の設備を使ってRVリゾートなどの計画を考えていました。そこで、ジャパンキャンピングカーショーの時に宿泊できるパーキングがないことを伝え、今回の実証実験を実施することになったのです。
まずは既存の施設を使って、RVパークとしての将来像を明確にすることからスタートすることになりました。RVパークを設置して、ペットと楽しめるフィールドやロッジなどを用意したり、イベント会場なども併設したいなど、色々なアイデアが出てきました。さらにシャトルバスを運行して、今ある自然を残しながらRVリゾートを作る構想も出てきています」
と今回のイベントが開催されるきっかけを教えてくれました。しかも、キャンピングカーオーナーが期待してしまう未来構想もあるようで、今後の展開に期待できます。今回のイベント開催にあたって、稲毛海浜公園との連携をしていること、さらに、日本RV協会へのアプローチも行っていて、民間、そして、協会との連携も期待できそうです。
見本市会場で直接宿泊するキャラバンセンターという文化

いなはくサンセットのようなイベントがジャパンキャンピングカーショーとセットで大きくなっていってほしいものです。そうすれば、たくさんのキャンピングカーユーザーが楽しむ環境が整ってくるのではないでしょうか。そして、それが文化として日本に根付くのかもしれません。しかし、そのような光景は夢ではないのです。
キャンピングカー先進国であるヨーロッパを見てみると、その答えがあります。ヨーロッパではキャンピングカーが社会に浸透しています。高速道路ではたくさんのキャンピングカーが走っているのを見かけます。そんな環境にあるドイツで開催される世界最大級のキャンピングカーイベントキャラバンサロンにはたくさんの人が集まってきて、会場近くで車中泊を楽しんでいるのです。

幕張メッセのような展示場から出る無料シャトルバスの1つにキャラバンセンター行きというのがあります。見本市の隣にある公園のような広大な広場です。そこが車中泊エリアとなります。
そこにはたくさんのキャンピングカーが集まっていて、ヨーロッパ各地からキャンピングカーがやってきます。その参加条件はヨーロッパの登録車両であることだけです。いろいろな国の人がやってきて、みんなで車中泊を楽しんでいるのです。
イベント開催期間も長いので、展示場へ行くこともなく、仲間と一緒にパーティを楽しむ人たちもいたり、誰もがキャンピングカーとのライフスタイルを楽しんでいる光景が広がっています。市内への無料シャトルバスも出ているので、デュッセルドルフの旧市街へ繰り出すことも可能です。

車中泊できる場所には電気はもちろんのこと、シャワー、ダンプステーションなど、キャンピングカーオーナーが必要とするサービスがすべて整っています。そして、食事などのケータリングも充実。ミュージシャンの生演奏などを聞きながら、のんびりとその空間を仲間と一緒に楽しんでいるのです。
おそらく、この光景は最初からこのような状態ではなかったのでしょう。最初は小さな駐車場だったのかもしれません。キャンピングカーがユーザーにとって何が必要で、どのようなサービスがあればRVリゾートとして進化していくのかなど、数々の課題をクリアしていった長い道のりがあったと考えられます。
日本国内においても、まずは既存施設を有効活用して、1つ1つ積み上げていくことが必要と考えられます。稲泊いなはくサンセット2025はまずそのスタートを切ったイベントだったのです。来年の開催は未定ですが、もし、開催されるのであれば、新しいキャンピングカースタイルの先駆者となってみるのはいかがですか。