需要拡大、パーツ不足など、いろいろな理由が重なって、キャンピングカーの納期が伸びているようです。なかには注文してから2年以上待たなければならないモデルもあるとか。
そこで、各社は生産能力を上げるために、さまざまな対策を行ってきました。日本RV協会の発行するキャンピングカー白書2022の調査によると、今後3年の間に設備投資をしたいと答えたキャンピングカービルダーは全体の半数を超えています。このように、各社の積極的な取り組みを感じられます。
そんななか、キャンピングカーメーカーを束ねるLACホールディングスが、2022年8月に新しい工場をオープンさせた、というニュースが入ってきました。しかも、キャンピングカーのために1から設計された工場だそうです。
工場の本格稼働を待って、メディアにその姿が公開されたので、詳しくリポートしてきました。
目次
キャブコン「アネックスリバティ」専用の生産工場としてオープン
LACホールディングスの新しい工場は岡山県倉敷市にオープンしました。グループ内のデルタリンク本社の近く、玉島というエリアです。港町として発展してきた街で、海の近くには古い街並みが残っています。郊外には農作地が広がり、大きな幹線道路が通る、交通の便がいい場所でもあります。
工場の敷地は約2600坪。広々としたスペースに、キャンピングカーを製造するためにレイアウトを考えられた工場が、建坪約700坪の大きさで建設されました。
他の場所で制作したシェルを搬入して、ベース車両とドッキング、パーツ組み込み、仕上げ、検査など、すべての工程がこの中で行われています。
大きなキャンピングカーの製造工場ということで、いろいろなクルマがたくさん並んでいるかと思いましたが、ここはアネックスのリバティシリーズ専用の工場だそうです。
これまではアネックスの徳島工場で製造されていましたが、オーダー数の増加もあり、キャパに限界を感じていたそうです。
そこで、キャブコンのラインをそのまま倉敷の新工場に移して、今まで使っていた徳島工場をバンコン専用の工場として稼働させることになりました。
アネックスのキャンピングカー「リバティ」ができるまでをすべて見学
キャンピングカーはシェルをクルマに載せて、装備を装着していくのが基本的な流れです。新工場ではシェルを搬入したら、そのままクルマへ架装する作業が行われます。
ベース車両にシェルを載せるのは基本的な作業ですが、家で言えば土地にしっかりとした基礎を作る工程ににています。ここでの作業はスタッフ数人で調整が繰り返され、正確なセッティングが行われるのです。
そのためにも、広々としたスペースが必要で、工場の中でも広いスペースが確保されていました。天井のクレーンでシェルを持ち上げて、微調整が続きます。
ベース車両にシェルを載せると同時に、品質チェックも徹底します。ハンドライトで光をボディに当てて、ちょっとした傷や膨らみなどがないかを確認するのです。
その後、製造ラインにクルマが移動され、各車両の仕様に合わせた装備が取り付けられていきます。
すべての組み込みが完了すると最終チェックと仕上げです。検査スペースにクルマを停めて、入念にチェックします。
最終のチェックエリアはトップ画像の右側シャッターの後ろになります。左側のシャッターからシェルが搬入され、工場内を左から右へ移動して、白いシャッターから出荷されるようになっているのです。
キャンピングカー専用工場として設計された機能性の数々
最終チェックのエリアのフロアには大きな、キャブコン1台分の全長をカバーできる排水溝が設置されていました。クルマ1台ごとに設けられているようです。これは最終出荷の前の洗車用に用意されたもの。キャンピングカー専用工場らしい設備です。
2階にはパーツのストックスペースが広々と確保されていました。上写真の左側に写っている青い装置は荷物専用のエレベーターです。
パーツが入荷されたら、宅配業者がよく使っている大きなワゴンに載せて、2階に搬入できるようになっています。
ここにも大きなクーラーが取り付けられていて、夏でも快適な環境を保っているそうです。
細かいパーツはワゴンに載せられて2階に上がっていきますが、シェルなどの大きなパーツはコンテナから引き出す作業も大変です。
そこで、準備されたのがこの装置。コンテナの高さに合わせて高さを調整して、シェルを安全に引き出す準備ができるという優れものです。
揃ったパーツ類は、キャンピングカーごとにワゴンが指定されていて、クルマの仕様に合わせたパーツを載せて、工場のラインを一緒に動くようになっていました。
配線など、細かいパーツは工場の中央部で、すぐに取り付けができるようにチェック、加工が行われているそうです。
パーツ取り付け時にちょっとした不具合があると、パーツを加工しなければならず、その時間的ロスを補うためにも、ここでパーツを事前にチェックしているそうです。
工場の壁際をクルマが動いて、中央でいろいろな作業をしているのが分かります。すべての工程を一望できるのも、キャンピングカー専用工場ならではではないでしょうか。
広々とした工場ですが、その印象を強めているのは、工場内に柱が少ないせいかもしれません。あえて柱を少なくしていて、工場の中央部分に柱がないのも特徴です。
その反面、エアーツール用のエアー配管や電源をどのように配置するか、頭を悩ませたそうです。そこで、考えられたのが、地下に埋め込んでしまう方法。
工場の床に溝が掘られていて、そこへエアー配管と電源を確保しました。大きなイベント会場などと同じ仕組みです。
作業する人は近くの接続口に電源タップや工具を接続して作業することになります。その数もたくさん用意されているので、かえって作業効率が上がるのかもしれません。
キャンピングカー製造スタッフが快適に作業できる環境を提供する
きれいな工場の内部をみてきましたが、スタッフが過ごす環境も素晴らしいものでした。「快適な環境を提供したい」という考えで、工場とは思えないような環境が整っています。
特に注目なのが、スタッフたちの休憩ルーム。明るく広々としたスペースが確保されています。
キッチンも備えているので、調理をすることもできます。ドリンク類のベンダーも用意されて、いつでも快適に休憩できそうです。
グリーンがあふれ、家具の1つ1つにもこだわりを感じます。どこかカフェのような雰囲気を感じてしまう休憩ルームです。
人気のスペースは窓際のカウンターだそうですが、奥にはソファまで設置されていて、好きな場所でリラックスできる環境が整っていました。
ロッカールームにはシャワーまで完備されています。夏場などは汗を流してから帰宅してほしい、という思いが込められているそうです。
会議室はズーム会議などの需要に合わせて、あえて小さな部屋が用意されました。部屋には、それぞれ「LIFE」「ADVENTURE」の名前が付けられ、LACの名前の由来になった言葉が並んでいます。
部屋を作る時にこだわったのが、工場の内部が一望できること。会議室からも全体を見渡すことができて、キャンピングカーのラインがひと目で確認できます。
工場内を俯瞰して見られる環境は、工程の問題点なども早期に発見できることが期待できます。さまざまな効果を見込んで、各部屋から工場内部が見られるようになっているのでしょう。
キャンピングカーメーカーのホールディングス化が永続的な発展をサポート
右からダイレクトカーズ専務取締役内村次郎さん、LACホールディングス代表取締役副社長百田雅人さん、同代表取締役会長田中昭市さん、同代表取締役社長山田秀明さん、ダイレクトカーズ執行役員村井治友さん。
工場のお披露目と同じくして発表されたのが、LACホールディングスにダイレクトカーズが参加するというニュースでした。
株式交換という形でLACホールディングスとダイレクトカーズの株を持ち合うという業務提携です。
各ブランドのモデルラインアップが大きく変わることはありませんが、パーツ確保の効率化による生産効率の向上、販売チャネルの拡大などが期待されます。
このようにしてLACグループは拡大をしてきました。この岡山県倉敷市玉島にオープンした、アネックスLIBERTYシリーズ生産専用工場も、グループ内で長年検討されてきた事業だそうです。
構想から数年が経過していていて、用地の選定から、いろいろと悩んできたといいます。「将来的な人口減少にともなう周辺環境の変化や、ものづくりが育つ地域性を重視して」この場所を決めたというLACホールディングス取締役の田中氏と山田氏。
その先見の明は、LACグループの発展とともに、キャンピングカーマーケットのさらなる拡大を予見させるように感じました。
LACグループ(主要キャンピングカービルター・販売店)
株式会社アネックス株式会社デルタリンク
株式会社キャンピングカーランド
株式会社ダイレクトカーズ