キャンピングカーと聞いて、最初にイメージするのが、このキャブコンタイプではないでしょうか。ベース車両にキャビンを架装して、広い室内と豊富な設備が整っているモデルです。各社からいろいろなタイプのキャブコンが発売されています。
しかし、実際にオーナーになることを考えると、そのサイズ感に抵抗を感じる人も多いようです。特に気になるのが、クルマの全長。5mを超えた時点で、街中での行動が制限されてしまうのはいたしかない状況です。
例えば、一般的なコインパーキングは、全長約5m前後のクルマを駐車するように設計されている場所が多く、大きなキャンピングカーだと、駐車場の枠からはみ出てしまうこともあります。自宅の駐車場も然り。カーポートの長さは意外とシビアに設計されているものです。
それでも、キャンピングカーとしての快適な環境が欲しい、という人は多く、コンパクトキャブコンというカテゴリーも存在するほど。そんな、コンパクトキャブコンの仲間に、アネックスのフラッグシップモデルでもあるリバティの仲間が登場しました。
使いやすさを追及した、全長5mのキャブコン
2024年の春に発売が予定されているのが、このアネックスのリバティシリーズ、リバティ50DBです。全長5m、全幅1.9mというコンパクト設計。既存モデルのリバティ52シリーズは、全長5.2m、全幅2mだったので、一回り小さい設計になっています。
バックパネルが52シリーズに比べて、やや垂直に立ち上がっていて、リアタイヤから後ろが少し短くなっているのがわかります。ボディサイドに断熱パネルを採用して、シェルの作りも52シリーズとは少し違うようです。
ベース車両はカムロードになりますが、トレッド幅が狭いナローモデルを採用しています。ボディも軽量設計で、ブレーキングやハンドリングは、ミニバンなどから乗り換えても、さほど違和感を感じることはありません。
現時点で完成しているのは、ディーゼルエンジン仕様のみ。中型免許の必要ない3.5t以下の車両製造に適したガソリンモデルが切望されるところですが、もちろん、アネックスではガソリンエンジン仕様のクルマも検討しているそうです。
バンク部分はロープロファイルスタイルで、風の抵抗を軽減するデザインを採用しています。フロントウインドー上部から立ち上がり、リアへ流れるような形状です。車幅が1.9mということもあって、よりスマートな印象を際立たせていました。
その他にも、サイドスカートレスで徹底的に風の影響を軽減しようとしているのが分かります。リバティ52シリーズも風の抵抗を軽減するボディデザインでしたが、50DBではさらにボディのコンパクトさを活かして、より風の影響を受けにくいように設計されています。
オーニングはリバディらしい装着方法で、ルーフ上部へ取り付けられていて、サイドへの張り出しがありません。フロント側はオーニングの高さまでルーフが立ち上がって、ルーフ部分の少し窪んだ部分へオーニングが装着されているのが分かります。
これも風の抵抗を軽減を考えての設計ですが、ナローボディ本来の全幅を抑えたコンパクトさを活かしているともいえるでしょう。
オーニングを装着しない場合は、フロント側に追加のパーツが取り付けられ、風をスムーズに後方へ流す設計になっています。
展示車両には電動ステップが取り付けられていました。ドアの開閉に合わせて、自動的にせり出してきます。走行安定性を追及した低重心設計なので、エントランス部分の地上高はそれほど高くありませんが、ステップがあると乗降が楽です。
ドア部分にオートクローザーが付いていて、軽くドアを閉めると、最後はモーターの力でしっかりと扉を閉じてくれるようになっていました。キャブコンの扉は密閉性が高いので、閉める時に苦労しますが、キャプコンには珍しいオートクローザーのおかげでストレスを感じることもありません。
広さを活かしながら機能性を追及できるコンパクトキャブコン
室内のレイアウトは、エントランス正面にリビングスペース、そして、キッチン、マルチルームを抜けてリアに1840×700mmの2段ベッドがあります。ナローボディーですが、室内は広々とした印象です。
撮影車両はプロトタイプになるので、量産モデルでは仕様の違いが出てくると思いますが、基本のレイアウトは変わらないとのことでした。換気扇などの設備も若干の変更があるようです。
キャビンの居住スペースはボディサイズに影響されるはずなのですが、このリバティ50DBはあえてリビングスペースを広く確保しているようです。テーブル天板も非常に広いのが分かります。
シンプルなテーブル設計なので、天板下にレールなどがないことから、カップホルダーを取り付けることも可能になりました。テーブルを取り外して、シートの間へセットすれば、簡単にベッド展開をすることも可能です。
リバティ52シリーズに比べて車高が約5cm低くなっていますが、室内に入ってみると、ヘッドクリアランスも十分に確保されていて、立って移動する時も圧迫感を感じることがありません。フラットなルーフで室内へのせり出しも少なく、ダウンライトも組み込み式なので、そう感じるのかもしれません。
サイドウインドウ上部にはエアコンが取り付けられていました。室外機はボディサイド後方に埋め込んであって、室内外ともすっきりとしたデザインで取り付けられています。詳しい仕様は決まっていませんが、この家庭用エアコンは標準搭載されるのではないでしょうか。一方で52シリーズにあった床暖房の設定はないようです。
全長5mのキャブコンに広いリビングと収納スペースが共存
コンパクトキャブコンで気になるところは、その収納力です。リバディ50DBの場合は、室内リビングを広く取っているので、収納スペースが十分あるか、不安に感じるかもしれません。しかし、しっかりと収納スペースを確保しています。
全長が短いキャブコンの場合、マルチルームレスになることが多いのですが、このモデルではしっかりとマルチルームが確保されていました。室内にはFFヒーターの吹き出し口もあり、スキーウェアなど、濡れたものを入れて、乾燥させておくこともできる仕様です。また、外につながった扉もあり、荷物の出し入れも容易になっています。
ベッド下は室内、車外、両方からアクセスできるラゲッジスペースになります。一部、エアコンの室外機用にスペースが使われていますが、左サイド、リア、室内に扉が付いているので、長尺物を積み込むことも余裕です。ベッドマットを取り外せば、高さのあるラゲッジスペースとしても活用できます。
室内上部両サイドには吊り下げ戸棚が設置されています。奥行きを抑え、高さを確保しているので、コンパクトながら収納力も高い設計になっています。
フロント上部はバンクスペース。ベッドとしても利用できる広さがあり、バンク、リビング、リア2段ベッドを合わせると、大人3名+子供2名の就寝人数を確保しています。手前の壁部分は量産タイプでは形状が変更されることになっているようです。
広さを最大限に活かすため、バンクスペースは跳ね上げ式になっていて、使わない時は収納できるようになっていました。ダンパーが取り付けられていて、操作もスムーズに行えます。
運転席上部の空間に余裕が生まれ、室内全体が一気に広がります。運転席側から、リアへの移動もスムーズにできるのではないでしょうか。
乗車定員は運転席と助手席、もしくは、プラス補助席の2〜3名、そして、リア4名乗車となり、合計6〜7名を予定しているとのことでした。補助席を使うかどうかは、まだ仕様が決まっていないようです。
コンパクトキャブコンのベース車両といえば、ボンゴトラックが一般的でしたが、生産終了となってしまいました。その代わりとなるベース車両としてタウンエースが注目されていますが、さらにパワーを求める声も多いのが現状です。
そこでカムロードを使って、これまでボンゴトラックが担ってきたセグメントをカバーするモデルを作るメーカーが出てきました。今回のコンパクトなリバティの登場もまさにこの潮流に乗っ取った流れといえるでしょう。
アネックスのフラッグシップモデルでもあるリバティのコンパクトモデルとして、デザイン性や居住性を重視しながら、必要最小限の設備と豊富なオプション設定が設定されたリバディ50DB。
メーカーとしてはエントリーモデルとして位置づけているようですが、オーナーの好みに合わせて、高級キャンピングカー同様のアレンジも可能な、拡張性の高いモデルともいえるでしょう。
今回撮影したモデルはプロトタイプ。2024年2月に開催されるジャパンキャンピングカーショーでは、量産モデルとなる最終の仕様がお披露目され、正式な仕様も発表される予定です。
リバティ50DB 諸元
- ベース車両
- トヨタカムロード
- エンジン
- 2.8Lディーゼル
- 駆動方式
- 2WD/4WD
- 車体サイズ
- 全長4,990mm/全幅1,900mm/全高2,830mm
- 定員
- 乗車定員8名(4WDは7名)/就寝定員3名+子供2名
- 価格
- 2WD¥9,636,000(税込)/4WD¥9,999,000(税込)