新春を迎え、毎年話題になるのが福袋ではないでしょうか。各百貨店では趣向をこらしたアイテムが選ばれています。最近では、金額も上がり、豪華な商品も多数。さらに、世相を表した商品が選ばれ、百貨店がどのような福袋を販売するのかも話題になります。
2021年、その福袋にキャンピングカーを採用した百貨店が現れました。松坂屋が地元のキャンピングカービルダーであるレクビィのキャンピングカーを福袋の商品にしたのです。三密を避ける体験型福袋のひとつとして、キャンピングカーが選ばれました。
老舗「松坂屋」の410周年記念の福袋ということもあって、価格設定も410万円に設定され、福袋用のモデルとなっています。クルマの仕様も気になるところですので、今回採用された経緯と販売するモデルについて、さっそく増田社長に聞いてみた。
知らない人にこそレクビィのキャンピングカーを見てほしい
「率直に言って、いままでのレクビィは「知る人ぞ知るビルダー」という感じで、堅実で便利なキャンピングカーを職人たちが作るという、比較的、サイレントなイメージでした」とレクビィの増田浩一社長(以下同)。
最新モデルのホビクル・オーバーランダー発表からは、プレス向けの試乗車を設定するなど、SNSなどの情報発信も活発で、レクビィに来るキャンピングカーの資料請求は2019年の1.6倍になったそうです。
それでも、これまでのイメージを少しずつ変えていかなければならない、という増田社長は、キャンピングカーを知らない人たちへのアプローチを考えていたといいます。
「そこで、福袋はどうだろうとなりまして、松坂屋410周年とか、まったく知らずにダメもとで打診を行いました。採用するかもって返事が来たときはびっくりして、“あの松坂屋が!”って。名古屋人にとって松坂屋は最高の百貨店であり、そこにレクビィのキャンピングカーが並ぶってことで、“えらいことになったなぁ”と思いました」
410万円の「レクビィ・悠(HARUKA)」
福袋での採用が決まり、松坂屋からは「税込410万円でキャンピングカーを作ってほしい」と言われたそうです。同社のシンプルなホビクルを小改良する方式を検討したのですが、製造現場の社員から「それでは松坂屋に出す意味がない、レクビィらしいモデルを」という声が上がったといいます。
そこで、赤字覚悟で、上位モデルのプラス系のキャンピングカーをベースに制作が検討されました。もちろん生地や家具などに相当なコストダウンを実施。さらに、取引先に事情を説明して特別な価格で卸してもらった素材を使用して赤字幅を抑えたといいます。
そして、一部の費用を松坂屋に負担してもらうことで、410万円を実現することができたモデルがレクビィ・悠(HARUKA)。ハイエース標準ボディのハイルーフをベースに乗車定員8名、就寝定員3名を確保しています。
装備はシンク付きキッチン、冷蔵庫、カセットコンロ、ダイネットテーブル(リビングテーブル)、オーバーヘッドシェルフ(運転席上/客室左右)、サブバッテリー、走行充電装置とキャンピングカーとして十分な装備です。
820万円の「レクビィ・雅(MIYABI)」
松坂屋福袋用に準備された410万円の悠モデルに合わせるように、上位モデルとなる820万円のレクビィ・雅(MIYABI)も用意されました。レクビィの得意とする技術を駆使して、ぜいたくな栃木レザーを使ったシートなど、レクビィの最高級車シャングリラに採用されてきたものと同等のクオリティです。
基本的なレイアウトはレクビィ・カントリークラブをベースにしていて、ベース車両はハイエースのワイドボディ、ハイルーフ。後部に別室を備えたツールームタイプで、車内を有効に使える2段ベッドを採用。乗車定員は8名、就寝定員は3名となっています。
装備も豪華で、シンク付きキッチン、冷蔵庫、電子レンジ、家庭用エアコン、19インチ型テレビ、シャワールーム(防水マルチルーム)、ダイネットテーブル(リビングテーブル)、オーバーヘッドシェルフ(運転席上/客室左右)、2段ベッドが付いています。
さらに仕事でも使えるような設備として、リチウムイオンバッテリー、走行充電装置、ソーラーパネル、1500Wインバーター、100Vコンセント(2つ)まで付いているのです。ここまで揃っていると、車両価格820万円でもお得感があります。
可動部分の多い2段ベッドに採用するにあたって、各面合わせや可動部の摩擦など、いろいろな問題があったのですが、見落とされそうな非常に細かい個所まで注意しながら、サイズ調整を行い、試行錯誤しながら開発が進められたそうです。まさに、職人の技といえる作りです。
増田社長はこのレクビィ・雅(MIYABI)に対して、「820万円のモデルこそ松坂屋の高級志向のお客様に問いたいモデルで、瀬戸の陶工によるシンクやエアコンの装備など可能な限りの贅を尽くした装備を搭載しました」とその意気込みを語ってくれました。
コロナ時代の特需に終わるか、これからも需要は続くか?
福袋という特殊な形態でキャンピングカーを提供することで、キャンピングカー(バンコン)を初めて見るであろう、百貨店のお客様の反応が楽しみだといいます。
「コロナ禍でキャンピングカーが注目されていますが、新たに注目してくれたお客様が“普通に買うクルマ”として、キャンピングカービルダーの車両を認めてくれるか否か。今回のレクビィの挑戦には、その手掛かりになるヒントがあると思います」と増田社長は期待していました。
現在、キャンピングカーメーカー各社は多くの受注を抱え「特需」と言われる状況が続いています。業界最古参のビルダーのひとつであるレクビィは、このタイミングを、これまで国産ビルダーが切磋琢磨してきた結果を披露する時が来た、と捉えているようです。
だからこそ、長年、キャンピングカー業界を見てきた増田社長は、キャンピングカーを知らない人の反応が気になるといいます。「いやいや、ひどく、けなされるかもしれん(笑)」と増田社長は謙遜しますが、きっと新しい価値観を持った反応が聞こえてくるのはないでしょうか。
キャンピングカーの「悠」と「雅」は12月16〜21日の間、松坂屋名古屋店の南館1階のオルガン広場に展示されますので、興味のある人は実際のクルマを見てみてください。
福袋用キャンピングカー「悠」の購入方法は12月16日〜1月3日の間、松坂屋名古屋店のホームページから予約し、応募多数の時は抽選となります。また、「雅」の購入はレクビィに直接問い合わせとなります。
今回の特別モデルの販売台数は「悠」が1台、「雅」が2台。各モデル1台は即納されるので、すぐにキャンピングカーに乗りたい人にはおすすめです。
コスト的にも非常にお買い得になっていますので、キャンピングカーが気になっている人はこのチャンスを見逃さないでください。