トヨタ・ダイナをベースに、キャンピングカーのベース車として専用開発されたカムロード。長年に渡って国産キャブコンを支えてきた、ベース車両のメインストリームだ。
これまでも少しずつ進化を遂げてきた同モデルだが、2021年のモデルチェンジで各部を大幅にアップグレード! 最新のパワートレインやセーフティサポートシステムを備え、現代的なベース車両として生まれ変わった。
今回は、キャンピングカービルダーバンテックの協力を経て、新型カムロードのディーゼル車を詳しくレポートする。
全車リアダブルタイヤ化
新型カムロードの最大のポイントは、全車リアダブルタイヤになったことだ。近年、家庭用エアコンや大容量サブバッテリー、電化製品などで、キャブコンの重量は重くなる一方。そのため、走行安全性に直結する全車リアダブルタイヤ化は、今回のモデルチェンジでもっとも重要なトピックのひとつと言えるだろう。
既存モデルでもリアダブルタイヤを選ぶことはできたが、2WDしかラインナップがなかったため、「4WD車が欲しくてリアシングルタイヤを選ぶ」というユーザーも少なくなかった。しかし、全車リアダブルタイヤになったことで、「2WD&リアダブルタイヤ」「4WD&リアダブルタイヤ」の両パターンが選べるように。幅広い使い方をされるキャンピングカーにとって、これは大きなアドバンテージだ。
ちなみに今回の新型では、2.8リッターエンジンを搭載したディーゼル車が「ワイドトレッド・リア大径ダブルタイヤ」なのに対し、2リッターエンジンを搭載したガソリン車は「標準トレッド・リア小径ダブルタイヤ」のみとなった。つまり、新型カムロードのラインナップは以下の3種類。
- ディーゼル車 2WD リア大径ダブルタイヤ ワイドトレッド
- ディーゼル車 4WD リア大径ダブルタイヤ ワイドトレッド
- ガソリン車 2WD リア小径ダブルタイヤ 標準トレッド
「パワー・トルクに余裕がある」「4WDが選べる」「安定性の高いワイドトレッド」などのメリットを考えると、新型カムロードではディーゼル車が主流になっていくことは間違いない。ちなみに、今回取材したバンテックでも、新型カムロードのベース車両はディーゼル車のみとなり、ガソリン車は採用しない方針とのことだ。
*編集部注
特装車のカムロードは、ビルダーによって製作するキャンピングカーの特性に合わせ、上記ラインナップ以外の仕様が使われる場合もあります。
エンジン&ミッションを一新
新型カムロードは、パワートレインも一新されている。ディーゼル車のエンジンは、既存の3Lディーゼルターボから2.8Lディーゼルターボに変更。既存モデルと比べて200ccの排気量ダウンとなるが、最高出力144馬力・最大トルク30.6kgmとスペックは同様となる。
新採用のGD型エンジンは、ランドクルーザープラド、ハイエース、ハイラックスなどに搭載されているトヨタの最新クリーンディーゼル。低速からスムーズに湧き上がるビッグトルクと高い静粛性、6速ATとの組み合わせで、重量級のキャブコンでもストレスのない快適なドライブを実現できるはずだ。
ミッションは4速ATから6速ATに変更され、シフト回りのデザインも一新された。シフトをDからSに移動すると、ノブの横にあるスイッチでシフトの手動操作が可能になる。急な下り坂で、エンジンブレーキを利かせたい時などに便利だ。
有害な排出ガスを浄化する尿素SCRシステムを採用したことで、アドブルー(AdBlue)タンクが新しく装備された(写真左)。そのため、燃料タンクは既存モデルの80Lから60Lにサイズダウン。長距離ドライブの多いユーザーにとって唯一残念な要素となるが、そのぶん最新パワートレインによる燃費の向上が期待できる。
安全性能を大幅に強化
フロントウインドー上部には単眼カメラ、フロントバンパー中央部にはミリ波レーダーを設置。ここから得た情報を基に、各種安全サポートシステムを制御する。
フロントグリル内とフロントバンパー左右コーナー部には、前方の障害物を検知するソナーセンサーが埋め込まれる。
ユーザーにとってもっとも喜ばしい変更は、安全装備が大幅に充実したことだ。新型カムロードで新たに装備されたのは、衝突の回避や衝突時の被害軽減をサポートする「プリクラッシュセーフティ」、車線を逸脱するとランプとブザーで注意喚起する「レーンディパーチャーアラート」、アクセル踏み間違いによる衝突を回避する「前進誤発進抑制機能」、前方障害物との距離が近づくと警報音でドライバーに知らせる「クリアランスソナー」など。既存モデルと比べると、大変な進化だ。
従来装備のABSに加えて、車両の横滑りをセンサーが感知して各輪のブレーキとエンジン出力を制御する「VSC(車両安定制御システム)」、発進・加速時にタイヤの空転を抑えて直進性・安定性をサポートする「TRC(トラクションコントロール)」も新搭載された。
室内の快適性も重要だが、大切な家族や仲間、ペットを守る走行安全性は、クルマとして絶対に外せない要素。多くの安全サポートシステムを搭載した新型カムロードの登場で、より安全・快適なドライブが実現できるようになる。
LEDヘッドライト
既存モデルのヘッドライトはハロゲンバルブだったが、新型カムロードではLEDヘッドライトに変更された。夜間の視認性は、安全性に直結する。郊外の高速道路や峠道などの暗い道を走る機会が多いキャンピングカーにとって、夜間の視界をいっそう明るく保つLEDヘッドランプの標準化は喜ばしいトピックだ。
ヘッドライトには、周囲の明るさに合わせてライトの点灯・消灯を自動的に行う「オートライト」のほか、ハイビームとロービームの切り替えを自動で制御する「オートマチックハイビーム」機能も備わる。
その他の変更点
フェイスデザインは、前モデルのイメージを踏襲。大幅な変更は加えられていないが、ボディ同色のフロントグリルに滑らかな曲線を組み合わせた新形状を採用することで、よりスタイリッシュなフェイスデザインへと進化している。
メーターパネル内の集中液晶ディスプレー。新型カムロードでは、アドブルーの残量や燃費などもひと目で確認できるように変更された。
大きな進化を遂げた新型カムロードの登場で、国産キャブコンのクルマとしての完成度や魅力がより高まることは間違いない。既存モデルよりも確実に車両価格はアップするが、走行性能・安全性などトータルでの性能向上を考えると、それも致し方ないことだろう。
今回取材にご協力いただいた「バンテック」では、「新型カムロードを採用したキャブコンの詳細や価格は、現時点では未定」とのことだが、来年のジャパンキャンピングカーショーには新型車両を展示できる見通しだという。
新型カムロードの登場による、これからの国産キャブコンの進化に期待したい。