
2026年7月11日〜12日の2日間にわたり、東京ビッグサイトで開催された東京キャンピングカーショー2026の会場を歩いていると、今年は少し雰囲気が違うことに気付きました。
数年前であれば、大容量リチウムイオンバッテリーや家庭用エアコンなど、各社が同じ方向を向いている印象がありました。しかし今回は、会場全体をひとまとめにできるようなはっきりとした流れがあまり見えてきません。でも、これはいい傾向なのかもしれません。
目立ったのが、それぞれのメーカーが自分たちらしい提案を打ち出していたことです。普段使いしやすいコンパクトモデルを充実させるメーカーがあれば、EVへいち早く取り組むメーカーもありました。限定モデルで特別感を演出する車両や、YouTuberとのコラボレーションなど、ブースを巡るたびに新しい発見があり、見て回る楽しさを感じるショーでした。
一つのトレンドを追いかける時代から、それぞれの暮らしや趣味に合わせて選ぶ時代へ変化してきているのかもしれません。そんな東京キャンピングカーショー2026で印象に残った新しいムーブメントについて紹介します。
目次
日常使いと車中泊の距離が近づくボーダーレスなモデルたち
今回の会場で、まず目に留まったのがコンパクトモデルの充実です。ロッキー2では、乗用車のホンダ・フリードをベースにした車中泊仕様を展示していました。普段は街中を走り、休日にはそのまま車中泊へ出掛ける。そんな使い方をイメージしやすい一台といえるでしょう。
さらに目を引いたのが、コンパクトな車体にクーラーまで搭載していたことでした。以前であれば大型キャンピングカーで見かけることが多かった装備が、普段使いを重視した小型車にも取り入れられるようになっています。
コンパクトカーへの参入は、フロットモービルにも見られました。これまでタウンエースをベースに展開してきた同社は、新たに軽自動車ベースのキャンピングカーを披露。多くのユーザーに対応すべく、コンパクトなモデルをデビューさせたのです。
こちらにもクーラーが組み込まれ、限られた空間でも快適性を高めていました。普段使いと車中泊を一台で楽しむライフスタイルが、以前より身近になってきたことを実感できるモデルでした。
EVキャンピングカーが身近な選択肢になるかもしれない
コンパクトモデルの充実と並んで、今年の会場で目立っていたのがEVです。その中心となるのが、Kiaの新型EVバン「PV5」でした。一社だけが展示するのではなく、複数のビルダーがそれぞれ異なる提案を行っていたことからも、この車両への注目度の高さがうかがえました。
トイファクトリーでは、PV5へベッドキットを組み込んだ車両を展示。普段は乗用車として使い、必要な時だけ就寝スペースを作れるレイアウトのライトな車中泊仕様です。
一方、ダイレクトカーズでもPV5の取り扱いが始まりました。LACグループ全体での取り扱いが決まり、グループ内のダイレクトカーズはハイエースを中心にキャンピングカーを製作してきたメーカーですが、新たなベース車としてEVへ踏み出しています。
本格架装も始まったEVキャンピングカー
Kia PV5を使った展示は、ベッドキットを組み込んだライトな仕様だけではありません。ホワイトハウスでは、ポップアップルーフを備えたモデルを展示していました。停車時にルーフを持ち上げることで室内高を確保し、限られたボディサイズを有効に使うスタイルです。
車内にはベンチシートを採用し、家具や装備を詰め込みすぎないことで、ゆったりとした居住空間を確保しています。電装品を収めるスペースもコンパクトにまとめられ、空いたスペースで人が過ごす空間を広く取っています。
シート下には電子レンジの姿も。PV5はクルマ自体がAC100Vを供給できるので、新たに電源システムを構築する必要もありません。
登場間もないベース車でありながら、ポップアップルーフを備えた本格的なキャンピングカーが展示されていたことには、各社の開発スピードの速さを感じます。
YouTuberとのコラボレーションモデルが注目
新しいベース車両が登場する一方で、車両の魅力の伝え方にも変化がありました。その一つが、YouTuberとのコラボレーションモデルです。
日本特種ボディーの展示ブースには多くの来場者が集まり、車両を見学するための列ができていました。その様子からも、公開前から大きな関心を集めていたことが分かります。
新型車として発表されたのが「aosagi」です。実際に車中泊を楽しんでいるYouTuberだからこそ気付く使い勝手や装備へのこだわりが車両へ反映されています。しかも、展示前からYouTubeでモデルの動画がアップされていて、注目されていました。
キャンピングカーは、写真やスペックだけでは使い勝手を判断しにくい乗り物です。動画で実際の使い方を知り、会場で実車を確認するという、新しい車選びのスタイルも感じられます。
メーカーとYouTuberが一緒に車両を作り上げる取り組みは、話題づくりだけではない価値を持ち始めているのかもしれません。
特別な一台を所有するコレクションとしての楽しさ
会場を巡るなかで、思わず足を止めてしまう一台に出合いました。ダイレクトカーズの「世紀末車中泊伝説 北斗の拳 FIST OF THE NORTH STAR」です。
アニメ『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-』とのコラボレーションから生まれた特別仕様車で、新車の8型ハイエースワゴンをベースにしています。販売台数は7台限定。価格も777万円からと、作品にちなんだ数字が採用されました。
外装にはフロントブッシュバーやルーフラックを装着して、車内にも専用デザインを採用しています。さらに北斗の拳作者である原哲夫先生の直筆イラストとサイン入りボードが用意されるなど、作品の世界観が細部まで表現されています。
車内を暗くすると天井には北斗七星や星空が浮かび上がり、ベッドに横になりながら作品の世界観を楽しめる演出も隠されています。
キャンピングカーの機能だけでなく、好きな作品と旅を楽しむ、という新しい価値を提案する一台でした。
トレーラーのニューモデルにEV設備を利用した新しい発想
新しい動きは、ベース車両やデザインだけではありません。電源の確保にも新しい発想が見られました。その新しい発想を取り入れていたのが、キョーワの「ROOVE」です。
車体にはEV用の充電コネクターを備え、EV充電設備を利用して大容量バッテリーへ充電できるシステムです。これまでキャブコンなどにはありましたが、トレーラーでは珍しい存在。
室内は従来のキャンピングトレーラーと変わらない快適な居住空間を確保しながら、新しい充電方式を採用しているのです。海外ではトレーラーのEVモデルも出てきましたが、国内でも電化を意識した技術が少しずつ取り入れられ始めているのかもしれません。EV充電設備を活用する新しい発想は、今後の電源システムの可能性を広げそうです。
東京キャンピングカーショー2026では、一つの流行が会場全体を占めるのではなく、それぞれのメーカーが異なる方向性を打ち出していました。キャンピングカーは「最新装備」を追い求める時代から、「自分に合った一台」を選ぶ時代へと変わりつつあるのかもしれません。
多様なモデルがそろった今だからこそ、自分の暮らしや旅のスタイルに合った一台を、これまで以上に見つけやすくなってきたといえるでしょう。




