ホントのところ使い勝手はどうなの!? 実体験で語る「軽キャンパーの本音」

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軽自動車のワゴンやバン、軽トラックをベースにした「軽キャンパー」は、ボディがコンパクトで運転しやすく、車両価格や維持費が安いことから、「手軽に楽しめるキャンピングカー」として人気を集めているカテゴリーだ。

筆者は、キャンピングカーライターという職業柄、これまでにあらゆるカテゴリーのキャンピングカーに接してきた。そのため、イベントなどで出会った一般ユーザーからキャンピングカーに関する質問を受けることも多い。中でも、もっともよく尋ねられるのが「軽キャンパーの使い勝手って、実際のところどうですか?」「走りはどうですか?」「ちゃんと寝られますか?」といった、軽キャンパーに関する質問だ。

あくまでも軽バン・ワゴンをベースにしたバンコンタイプの軽キャンパーの話になるが、今回は自らの実体験で感じた「軽キャンパーの本音」をお伝えしたい。

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軽キャンパーで3泊4日の青森・北海道1人旅

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以前、「軽&コンパクトキャンピングカー」というムック本の特集取材で、軽キャンパーに乗って青森・北海道の弾丸ツアーをしたことがある。運転も撮影も、すべて自分でこなす3泊4日の1人旅。しかも、合計走行距離は2500km! 20年以上の雑誌編集経験の中でも類を見ないほど過酷なスケジュールだったが、短期間ながらも密度の濃い旅を経験したことで、軽キャンパーのメリット・デメリットを肌で感じることができた。

車両は、三菱のミニキャブ・キャンパー(現在は生産終了)。ミニキャブバンの車内にフルフラットのベッドスペースを設け、リアエンドにコンパクトな家具類を装着。ルーフにポップアップ架装を施した、いわゆる「軽自動車ベースのバンコン」だ。

カメラ機材と着替えの入ったバッグを車内に放り込み、前日深夜に東京を出発して青森まで700km以上の道のりをひた走った。1日目は、青森の「白神山地」「十二湖」などを散策し、道の駅で車中泊。2日目は、早朝のフェリーで青森港から函館に渡り、ニセコのオートキャンプ場に宿泊。3日目は函館観光を楽しみ、道の駅で車中泊。4日目の早朝にはフェリーで本州最北端の大間に渡って、大間のマグロを味わったり、下北半島を観光したりしながら、約820kmのロングドライブを経て翌早朝に東京へと帰還した。

前述したとおり、この旅の合計走行距離は2500km。1日あたり600km以上走った計算となる。これだけハードな旅を共にすると、たった4日間の付き合いでもクルマへの愛着がグッと高まるから不思議だ。軽キャンパーの魅力や旅の楽しさにあらためて気づかされた、心に残る一人旅だった。

あらためて実感した軽キャンパーの機動力

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軽キャンパーを毎日600km以上乗り回してつくづく感じたのは、大型キャンピングカーにはない「コンパクトボディならではの機動力」だ。

「走る道」「止める場所」をいっさい考えずに旅ができることのアドバンテージは、想像以上に大きい。ボディが小さいため運転がしやすく、狭い駐車場でも躊躇なく突っ込める。面白そうなお店や景色の良い場所を見つけたり、道を間違えたりしたときは、すぐにUターン。「これはクルマというより、バイクに乗っている時と同じ感覚だな」と思いながら、観光地や街中をストレスなく自由に走り回った。

軽キャンパーなら、大型キャンピングカーでは走れないような狭い道路も無問題だ。実は、この取材旅でも、ナビの案内で恐ろしく狭いダートの林道を20km以上走らされている。キャブコンはもちろん、5ナンバーサイズのバンコンでもキツイほどの過酷な道だったが、そこはさすがに軽キャンパー! 持ち前の機動力で、ダートの狭小路を難なく走破することができた。その時は、心底「軽キャンパーでよかった」と思ったものだ。

ベッドスペースは1人旅なら十分快適!

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旅で使用したミニキャブ・キャンパーにはポップアップルーフが装備されていたが、ルーフベッドはなく就寝スペースは車内のみ。乗車定員4名・就寝定員2名という、バンコンタイプの軽キャンパーとしては標準的なスペックだ。

ベッドは、格納した純正リアシートの上に分割マットを敷く仕組み。ベッドスペースは長さ1830mm×幅1200mm程度で、ちょうど2人用山岳テントと同じくらいのサイズ感だ。実際に寝てみると、1人なら十分広く、窮屈さを感じることはなかった。広すぎず狭すぎないサイズで、1人旅ならかなり快適に就寝できる。
もちろん2人でも就寝は可能だが、左右の家具で足元が狭くなっていることもあり「ちょっと窮屈かな」といった印象。2人でベッドをフルに使用する場合、毎回リアに積んだ荷物をフロントシートに移動する手間も覚悟しなければいけない。

装備としては、携帯電話の充電に使用できるAC100Vコンセントと、夜間に車内で過ごすときの照明が役立った。小物入れやテーブルも便利だが、家具があるとその分ベッドスペースが犠牲になる。快適な就寝にこだわって軽自動車の限られた室内空間を有効利用するなら、あえて家具類を排除するなど装備の取捨選択も必要になるだろう。

気になる走行性能は!? ターボ車ならストレスフリー!

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軽自動車ベースということで、「走行性能はどうなの?」と疑問に思う人も多いだろう。筆者も、出発前は軽キャンパーでの長距離ドライブに多少の不安を感じていたが、旅に使用した三菱のミニキャブ・キャンパーはパワーに余裕のあるターボ車。アクセルを踏み込めば普通乗用車と同様の速度で高速巡行ができるため、とくに動力性能にストレスを感じることはなく、長距離ドライブも比較的快適だった。

ただし、高速走行の際はアクセルを踏み込んでエンジンを高回転で回し続けるため、パワーやトルクに余裕のある車両に比べれば長距離運転での疲労は大きい。帰路の大間~東京間の高速道路で、アクセルを踏み続ける足が疲れて「オートクルーズがあったらなぁ」としみじみ思ったが、これはバンコンやキャブコンの長距離運転時には出てこなかった感想だ。また、燃料タンクが小さいため満タン状態で走行できる距離が短く、頻繁に給油をしなければならない点にも不便を感じた。

軽キャンパーは、排気量660ccの軽自動車がベース。大がかりな架装で車両重量が増えれば、そのぶん動力性能は悪化する。そのため、軽キャンパーを選ぶ際は、できるだけパワーのあるターボエンジン搭載車をセレクトするのがベター。ターボ設定のない車種でキビキビとした走りを望むなら、あえてダイレクトなフィーリングのマニュアルミッション車を選ぶのも手だ。

軽キャンパーはどんな人に向いているか!?

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軽キャンパーを「何でもできる夢のクルマ」だと思うのは間違いだ。

ボディサイズと居住性は比例する。大幅な架装で空間を拡大した一部のクルマは例外として、少なくともバンコンタイプの軽キャンパーで「大人数」が「快適」に生活するのは難しい。しかし軽キャンパーには、「車両価格やランニングコストの安さ」「コンパクトボディによる機動力の高さ」という武器がある。これは、ほかのどのカテゴリーのキャンピングカーにも真似できない、軽キャンパーならではのアドバンテージだ。

テントに例えるなら、5×2mサイズのキャブコンは大きなファミリー用テント、軽キャンパーは少人数用の山岳テント。大型のファミリーテントは居住性に優れ、ファミリーでゆったり使用できるが、非常に重くてかさばる。小型の山岳テントは居住空間が狭く少人数向きだが、軽量・コンパクトで手軽に持ち運べる。

大型キャンピングカーには大型キャンピングカーの、軽キャンパーには軽キャンパーの良さがある。そこに優劣はなく、要は「使う側が何を求めるか」と言うことだ。

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少人数の使用で機動力を重視するなら、軽キャンパーはこれ以上ないほど頼もしい相棒だ。登山や釣り、秘湯めぐりなどでアクセスの悪いフィールドに出かける機会が多い人にも、軽キャンパーの高い機動力が強い味方になってくれるだろう。

テントを担いでの縦走登山、バイクのキャンプツーリングなど、これまでさまざまな旅をしてきたが、軽キャンパーの楽しさ・自由さは、それらの旅と共通する。普段は家族と5×2mサイズのキャブコンをフル活用している筆者だが、山岳テントで好きな場所を旅するように、軽キャンパーに遊び道具を積んで、気ままに旅をするのも悪くない。

WRITER PROFILE
岩田一成
岩田一成(いわた・かずなり)

1971年東京生まれ。キャンピングカーライフ研究家/キャンピングカーフォトライター。日本大学芸術学部卒業後、8年の出版社勤務を経て、2003年に独立。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に累計1000誌以上の雑誌・ムック製作に携わる。家族と行くキャンピングカーの旅をライフワークとしており、これまでに約1000泊以上のキャンプ・車中泊を経験。著書に『人生を10倍豊かにする 至福のキャンピングカー入門』がある。

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