日産ピーズフィールドクラフト メーカーインタビュー

メーカー・販売店インタビュー

 キャンピングカー業界では唯一無二の存在ともいえる日産車専門のRVプロショップ「日産ピーズフィールドクラフト」。同社はキャラバン、エルグランド、セレナ、キューブ、NV200などの日産車を使った安全で信頼性の高いキャンピングカーづくりに徹して20余年の歴史を誇っている。
 キャンピングカーといえば、乗用車に比べて販売拠点が少ないため、売っているショップを探し出すのがなかなか難しいものだが、日産ピーズフィールドクラフトの場合は、日本全国に展開している日産ディーラーでも車を取り扱っているため、誰もが住んでいる家の近くで買えるというメリットがある。しかも、その車両開発の基本コンセプトは“入門車”。すなわち、買ったその日から誰でも気楽に運転できるキャンピングカーを目指して設計されているため、免許取り立ての若者でも、奥様でも、シニアでも簡単に操作できるところに特徴がある。
 乗用車においても、EVや自動運転車などの開発に拍車をかけている日産自動車。躍進目覚ましい日産車の一翼を担うキャンピングカー部門として、日産ピーズフィールドクラフトにかかる日産本社やユーザーの期待も大きい。
 同社のキャンピングカーの人気の秘密は何か。また自動車革命ともいえる大変革期を迎え、今後の日産キャンピングカーはどういう方向に進もうとしているのか。同社の畑中一夫社長に、秘めたる夢を語ってもらった。

聞き手:キャンピングカーライター 町田厚成

日産ピーズフィールドクラフト 代表取締役 畑中一夫
日産ピーズフィールドクラフト 代表取締役 畑中一夫氏

アウトドア男の情熱をかけたキャンピングカー開発

【町田】キャンピングカーのお話をうかがう前に、まず畑中社長の趣味をお聞きしたいのですが

【畑中】いきなりそこからですか(笑)。いちおう海釣り、フライフィッシング、ジェットスキー、スキューバーダイビングということをホームページのスタッフ紹介欄には書いておきました。まぁ、“海の男”ですよ。

【町田】キャンピングカーを開発・販売するには最適の趣味ですね。

【畑中】前はぜんぜん違う畑にいたんですけどね。

【町田】それは?

【畑中】日産プリンス東京で普通の乗用車を売っていたんですよ。その前は日産車の整備士として働いていて、自動車レースにもメカニックとして参加し、富士スピードウェイなどのパドックでピット作業などをしていましたね。

【町田】じゃメカにはお詳しいんですね。

【畑中】いえいえ(笑)。キャンピングカーというのは一般的な自動車のメカとはまた違った技術が集積されたものなので、日産ピーズフィールドクラフトに入ってから、新たにキャンピングカーの勉強に取り掛かったようなものです。

最初は4WDショップとしてスタート

【町田】日産ピーズフィールドクラフトという会社は、いつ頃設立されたのですか?

【畑中】設立は1994年です。そのときはまだキャンピングカーを手掛けていなくて、4WDショップだったんですよ。当時四駆ブームが沸き起こっていて、店の構えもファッショナブルな4WD専門店のスタイルでスタートしたんです。
 しかし、これが思ったほどの成績をあげられなくて、4WDに代わるものとして、アウトドアつながりでキャンピングカー部門に移行していったわけです。僕が前の仕事場からこっちに移ってきたのもその時ですね。

【町田】最初のキャンピングカーはどんなものだったんですか?

【畑中】最初に作ったのは、ホーミー(キャラバン)のE24をベースにしたバンコンでした。
 ただ、これがなかなか架装しづらいベース車でね(笑)。リヤのオーバーハングが短いんですよ。そのため普通だったらギャレーなどの水回りを設置するところにタイヤハウスがきてしまう。だから、かなりトリッキーなレイアウトにならざるを得なかったんですね。

【町田】どういうレイアウトですか?

【畑中】まぁ、なんとか工夫して、セカンドシートを置いて、リヤは二の字の向かい合わせシートで9人乗りを実現するという基本的なレイアウトを維持することはできました。このスタイルはいまだに現在の「グレーシャー」というタイプの車に踏襲されています。
 そのE24のときに、すでにうちのバンコンブランド名である「クラフトキャンパー」という名称を使っています。

GLACIER(グレーシャー)
GLACIER(グレーシャー)

キャンピングカーを作りながらキャンピングカーを勉強する

【町田】その頃、キャンピングカー販売の戦略として考えられていたことは?

【畑中】まず値段ありき ! キャンピングカーというのは高額商品というイメージがありましたので、私たちは、インパクトを狙って 298という価格で売り出すことに決めたんですね。ちょうど、私たちがその頃扱っていた日産スカイラインの上級車種がその価格だったんです。
 スカイラインって、一般の人にとっては憧れの車でしょう。キャンピングカーも憧れの車であるのだから、同じぐらいの価格帯にしてみたらどうだろう … と考えてね。

【町田】当たりました?

【畑中】当たりました ! これは売れました。
 ただね、私たちもまだ始めたばっかりだから、いろいろ不勉強なところもあってね。

【町田】どんなところですか?

【畑中】外部電源を付けたのに、サブバッテリーもインバーターもなかったりとかね(笑)。今から思えば恥ずかしいこともいっぱいやらかしてましたね(笑)。
 内装などもよく分からなかったから、とにかく派手な柄にしようと思って、生地見本で一番派手な生地を取り寄せたりしていました。
 そうしたら、ある奥様から、「この生地は今年イタリアで出たばかりの生地でしょ? あなたたちセンスがあるわね」などと意外なところで褒められたりね。急いで得意げな顔を作って、「そういうお客様こそお目が高い!」などとお返ししたりして(笑)。
 とにかく日々勉強の毎日でしたよ。

GTの内装
GTの内装

厳しい“日産基準”をクリアしたキャンピングカー

【町田】日産ピーズフィールドクラフトのキャンピングカーづくりのポリシーというか、コンセプトのようなものをお聞きしたいのですが。

【畑中】うちはまず「日産ディーラー」として存在しているというところが、他のビルダーさんや販社さんと違うところでしょうね。
 つまり、キャンピングカーといえども、日産の看板を背負って出す限り“日産車”なんです
 だから車両づくりにおける「安全」「安心」などにはものすごく神経をつかう。日産車をつくる場合は、みな「日産基準」という厳密な決まりをしっかり守らなければならないのですが、キャンピングカーといえども例外ではないんですね。そういった意味で、かなり厳しい検査基準をクリアしている車だと思っていただいていいです。

【町田】ただ、そういう基準をクリアしなければならないとなると、開発の自由度も制限されはしませんか?

【畑中】それは確かにあります。しかし、我々の実力は日産本社にも認めてもらっているので、我々の提案に合わせる形で“日産基準”が適用される場合もあるんですね。
 たとえば、日産本社の依頼によって、「アトランティス」というアトラストラックベースのキャブコンを開発したことがありましたけれど、これなどは、かなり自由に設計させてもらいました。

シンプルな作りの「キャンピングカー入門車」がメイン

【町田】全国の日産ディーラーで発売するとなると、メンテナンスなどはどうなるのですか?

【畑中】基本的に、車両部分のメンテナンスはそのキャンピングカーを売ったディーラーで行います。
 架装部分の細かいところのメンテは、我々のところに回送されてくる場合もあれば、簡単な修理ならパーツを送って地元で処理する場合もあるし、近くのキャンピングカーショップさんがサポートしてくれることもありますね。ケースバイケースですね。

【町田】全国の日産ディーラーが売るとなると、そんなに複雑なキャンピングカーは扱えませんよね?

【畑中】もともと私たちの開発する車両は、キャンピングカーの入門車ですから、そんなに複雑な機能や装備を搭載していないんですね。
 だから、乗用車しか売ったことのないセールスマンでも、少し勉強するだけでうちのキャンピングカーをお客様にプレゼンすることはできます。

【町田】そうなると、お客様もキャンピングカーを買うのがはじめてという方が多いのでしょうか?

【畑中】確かにそういう方が多いですね。もちろん、なかには年をとってきたから取り回しの良い小型のキャンピングカーに替えたいとか、逆に家族が増えたので、もう一回り大きなキャンピングカーに替えたいというお客様もいらっしゃいます。
 うちの場合は、ある程度の家族構成や価格帯に合わせた品ぞろえがありますので、どんなご要望でもいちおうお応えできると思います。

NV350ベースのT7
NV350ベースのT7

特注生産は請けるのか?

【町田】キャンピングカーの場合、特注生産を請けなければならないこともありますよね。そういう場合はどうされるんですか?

【畑中】いちおう全国の日産ディーラーでも対応できるようにするということもあって、基本的にワンオフは受けません。
 ただ、お客様との人間関係が深かったりした場合、「どうしても !」と頼まれれば個別オーダーを請けることもあります。
 この前あるお客様に頼まれて、釣り仕様のキャンピングカーを1台作りましたけれど、それは例外的なことですね。
 自分としては、ほんとうはワンオフもやってみたいんですよ。適度にワンオフをやっていた方がビルダーとしての腕は上がるんですね。頭も使うことになるので、思考を柔軟にする作用もある。そして、そこで試したアイデアというのは、次に生きることがあるんですね。
 ただ、今はずっと工場が立て込んでいるので、現状では一品生産は無理ですけどね。

新型セレナのポップアップ仕様に期待

【町田】現在、特にアピールしておきたいお薦めの車種というのはありますか?

【畑中】うちの場合はみんなお薦めですよ !(笑)。でも、このたび発表を予定している新型セレナのポップアップ仕様はちょっと注目を浴びると思います。 
 なにしろ、ノーマル車でも新型セレナは評判がいいじゃないですか。だからそのキャンピング仕様においても問い合わせがいっぱい入ってきているんですよ。
 面白いものでね、うちの場合、よく売れるキャンピングカーというのは、みなノーマル車でも人気が高いものばかりなんです。
 けっきょくキャンピングカーというのは、開発サイドがいくら声を張り上げて訴えても、ノーマル車の人気が伴っていなければそんなには売れないものなんですね。ノーマル車が売れていれば、そのキャンピング仕様も確実に売れる。
 長いことやってきて、ようやくそういうことが分ってきました(笑)。

セレナのポップアップ仕様
セレナのポップアップ仕様

これからのキャンピングカーライフスタイルはどう変わる?

【町田】いま日産は2020年に一般道路でも自動運転できる車両を開発すると宣言していますよね。EVもそうとう台数を増やしている。
 そういった自動車の大転換期を迎え、キャンピングカーも今後は変わっていくのでしょうか?

【畑中】難しい問題ですけれど、ベース車が変われば、当然キャンピングカーも変わります。ただ、自動車交通の歴史をたどってみると、自動車だけが変化するということはなかったんですね。自動車が変化したときというのは、それにともなってインフラも変化している。自動車の安全な高速走行が可能になったのは、やはりハイウェイの整備と一体となっていたわけです。
 そのように、インフラと自動車の両面の変化によって、われわれのライフスタイルも変わっていくことになります。

【町田】キャンピングカーのライフスタイルが変わったのも、インフラの力によるものですよね。

【畑中】そうです。やはり「道の駅」と「立ち寄り湯」の普及。それが現在のキャンピングカーライフスタイルを完成させましたものね。
 その二つに、いまJRVA(日本RV協会)が進めているRVパークが加わってきました。現在のキャンピングカーを取り巻く環境は、われわれがこの商売を始めた20年前とまったく変わっています。

キャンピングカーのレンタルやリースが活発になる時代

【町田】今の若い人のなかには、あまり自動車に興味がない人もいます。若者の“自動車離れ”は、キャンピングカーにも影響を及ぼしそうですか?

【畑中】やはり、なんらかの影響は出るでしょうね。ただ、私はそれほど悲観していないんですよ。
 今の若い人たちは、昔の人のように自動車をフェティシズムの対象としては見ていないかわりに、仲間と一緒に楽しむツールと見なすようになってきました。
 昔はエンジンをボアアップして排気量を上げたり、サスペンションを固めて箱根のターンパイクを駆けまわったりした人たちがいたじゃないですか。休日は1日中ワックスがけしているとかね(笑)。
 そういう若者が減った分、仲間といっしょにキャンプ場に行ってバーべーキューを楽しんだりする若者が増えている。そのとき使っている車がミニバンやワンボックスであっても、もうその先にはキャンピングカーがあるんですよ。
 だから、キャンピングカーを使いたいと思う若者が今よりさらに増えていくのは間違いないことなんです。
 問題は価格だけなんです。現在のキャンピングカーは、まだ若い人が買えるような価格帯を実現していない。

【町田】ただ、1個人が所有していなくても、シェアするという方法がありますよね。最近は住居でもなんでも、若者たちはみなシェアリングするのが流行りとなってきましたが … 。

【畑中】そういう動向には注目していいでしょうね。だから、これからはキャンピングカーをみんなで使う知恵がたくさん生まれてくるように思います。おそらく、キャンピングカーのレンタルやリースも、今よりもさらに一般的になっていくんじゃないでしょうかね。

人口減少社会になっても、キャンピングカーは生き残る

【町田】もう一つの問題として、人口減少の問題もありますよね。日本は少子高齢化時代を迎え、自動車だけでなく、すべてのマーケットが縮小していくという不安を抱えていますが。

【畑中】それに関しても、私は楽観的なんですね。確かに日本の自動車マーケットは人口減少にともなって縮小していくかもしれません。
 しかし、キャンピングカーは自動車ほどには落ち込まない。
 なぜなら、キャンピングカーというのは趣味のツールだから。
 自動車は生活必需品ですから、それを必要としている人が少なくなければ売れなくなっていくかもしれません。
 でも、キャンピングカーは生活を楽しむための道具。そういうものはそう簡単には減らないんですよ。
 こういうことを言うと誤解されるかもしれないけれど、キャンピングカーって、本来は必要のないものなんですよね。それがなくたって、特に生活に困るわけじゃない。
 だけど、逆にいえば、そういう存在だからこそキャンピングカーは強いともいえる。
 生活にほとんど必要のないものというのは、“生活以外”のものなら何でも実現してしまう魔法のツールになるわけです。
 趣味というのは、そういう“生活以外の世界”に生きるということでしょ? そのとき、キャンピングカーというのは史上最強の趣味のためのツールに生まれ変わるわけですね。

キャンピングカーが実現してくれる夢

【町田】畑中さん自身が、キャンピングカーを使って、そういう趣味の世界にさまよい出ることはあるんですか?

【畑中】あります、あります! 自分自身で「キャンピングカーってどんな夢を実現してくれるんだろう?」と考えるときがあるんですよ。
 答はね、「眺める世界が普段と違ってくる」ということなのね。
 つまりね、普通私たちが生きている社会って、みな「人と人」が向き合う世界じゃないですか。仕事していれば、部下や上司やお客様と向き合う世界ですよね。家に帰れば家族と向き合う世界。
 でもね、キャンピングカーを使っていると、向き合う世界ががぜん広がっていくことが実感できるんですよ。
 たとえば、釣りをするために、キャンピングカーに乗ってポイントを探しているとするじゃないですか。
 そのとき自分が向き合っているのは「人」ではなくて、「自然」なんだよね。
 キャンピングカーでキャンプ場に泊まって、焚き火などしながら星空を見るとする。そのとき向き合っているのは「宇宙」なんですよ。

【町田】なるほど。キャンピングカーをオーディオルームのように改造して、音楽を楽しむユーザーもいますもんね。

【畑中】そう。そのとき、その人が向き合っているのは「音」。
 物書きさんで、自分の書斎にいるときより、キャンピングカーにいた方が原稿がすらすら書けるという作家さんがいるんですよ。その人はきっと、「物語」と向き合っているんでしょうね。
 そのように、人によってさまざまな世界を見せてくれるのがキャンピングカー

【町田】へぇ、キャンピングカーって奥が深いですね。今日は面白いお話をいろいろとありがとうございました。

WRITER PROFILE
町田厚成
町田厚成 (まちだ・あつなり)

1950年東京生まれ。 1976年よりトヨタ自動車広報誌『モーターエイジ』の編集者として活躍。自動車評論家の徳大寺有恒著 『ダンディートーク (Ⅰ・Ⅱ)』ほか各界著名人の著作の編集に携わる。 1993年『全国キャンプ場ガイド』の編集長に就任。1994年より『RV&キャンピングカーガイド(後のキャンピングカースーパーガイド)』の編集長を兼任。著書に『キャンピングカーをつくる30人の男たち』。現キャンピングカーライター。

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